27日に公開される米映画「マグニフィセント・セブン」は、ジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」(60年)のリメークである。元をたどれば黒沢明監督の「七人の侍」(54年)ということになる。

 スタージェス版の原題でもある「The Magnificent Seven」は、直訳すれば崇高な、あるいは堂々とした7人ということになる。流れ者(浪人)の身でありながら義に厚いサムライの心を持っているということなのだろう。

 それを象徴するリーダー役は志村喬、ユル・ブリナーと引き継がれ、今作ではデンゼル・ワシントンが演じている。頭をそり上げたブリナーは西部劇に微妙な違和感をもたらしたが、それは志村への敬意とともに髪形も倣ったと思えば納得がいく。

 一方で、冷静沈着、知的な雰囲気を漂わせるワシントンは、ブリナー以上に志村に近いかもしれない。それでも、西部劇の主人公に黒人というのはやはり思い切ったキャストである。「イコライザー」(14年)「サウスポー」(16年)とアクションに重厚な人間ドラマを織り込んできたアントワン・フークア監督が製作に当たって語っている。

 「『荒野の七人』の頃のウエスタン・ヒーローには白黒がはっきりした健全さがありました。でも、時代とともに変わります。ジョン・ウェインも『駅馬車』と『捜索者』では違う。より複雑により危険なヒーローに変身した。デンゼル・ワシントンがウエスタンに主演するなんて、昔だったら考えもしなかったと思います。でも、ヒーロー像が複雑になると本質が見えにくくなります。だから製作準備の段階では何度も『七人の侍』に立ち戻りました。そのDNAをきちんと受け継ぐことができたか、確認したかったんです」

 西部開拓時代に黒人が「リーダー」となるためには特殊な条件が必要だ。ワシントンの役は単純な賞金稼ぎというだけではく、7つの州の特別保安官的な地位にあると設定されている。

 フークア監督は徹底的なリサーチを行い、「西部出身で、政府から一定の権限を与えられた自由な黒人」という史実に則した、十分あり得る人物像を作りあげたという。

 従来の西部劇には希薄な要素だが、当時はメキシコ、アイルランド、ロシア、中国…と世界中から人が集まり、国際色豊かな状況だったと言われる。だから7人のメンバーにはクリス・ブラッド、イーサン・ホーク、ジャック・ホーンの他に韓国のイ・ビョンホン、メキシコのマヌエル・ガルシア・ルルフォ、さらにはイタリア出身のマーティン・センズメアーが先住民役を演じている。

 それぞれが複雑な過去を抱え、人物像がしっかり作り込まれている。フークア監督はこの辺の際立たせ方が本当にうまい。

 7人が守るのは小さな町。襲いかかるのは悪徳実業家(ピーター・サースガード)とその軍団という図式だ。VFX(特殊効果)に頼らない本格アクションに、7人の息づかいや汗が濃密で、脂ぎったところはマカロニ・ウエスタン的だ。

 作品のメリハリという面では、軍団が持ち出すガトリング銃の描写が印象的だ。金属が木材や肉を切り裂く音に圧倒される。最新の音響効果をフル活用して、目を背けたくなるくらいの迫力である。

 見終わったみれば、喜怒哀楽入り交じった複雑な感覚が残る。「七人の侍」のDNAは確かに感じられた。【相原斎】