岡田准一が演じるのはたたけばほこりが出るダメ刑事。綾野剛ふんする監察官がその不正を執拗(しつよう)に追いかける。

この設定だけで、演技巧者2人の脂っこいやりとりを想像するが、19日公開の今作では、「最後まで行く」のタイトル通り、2人が思いっきり突き抜けている。

アクションの見せ場を随所に織り込みながら、今まで見たことがないくらい濃いキャラの発露で、息をつかせないクライム・サスペンスに仕上がっている。

年末3日間の地方都市が舞台。裏金にまつわる内務調査が行われるという情報に心中穏やかでない刑事の工藤(岡田)は、折あしく母の危篤を聞き、雨の中車を飛ばす。よりによって突然目の前に飛び出した男をはねてしまい、途方に暮れる。男の死体をトランクに隠し、病院に駆けつけた頃には母は亡くなっていた。

母のひつぎに男の死体を入れて一緒に火葬するという奇策で危機を乗り切ろうとする工藤だが、最悪のタイミングで、裏金疑惑を追う監察官の矢崎(綾野)が現れる。

が、その矢崎にも裏があるようで、県警幹部や地元ヤクザの親分も絡み、工藤の運命は一転二転して…。

切羽詰まった工藤がもだえるような表情がリアルで、この男が懸命になればなるほどコミカルな感じになる。岡田が文字通りの熱演で、これほど崩れた姿は見たことがない。

追い込む側の監察官・矢崎はエリート然とした様子からしだいに狂気がにじんでくる。岡田に呼応するように綾野もどんどん熱くなる。

「新聞記者」や「余命10年」と作品ごとにまったく違うテイストを披露してきた藤井道人監督ならではの新味と言えるだろう。初顔合わせの岡田に対しては「小学校の頃から憧れだった」という強い思いがあり、藤井組常連とも言える綾野とは「僕の知らない僕をいつも見つけてくれる無二の監督です」(綾野)という信頼関係がある。

札束が積み上げられた金庫内や墓場で繰り広げられる終盤の格闘シーンには、「アクションのプロ」岡田が本領を発揮。綾野もこれに応えて、目を見張る仕上がりになっている。

韓国のオリジナル作品(14年)から中国、フランス、フィリピンでリメークされた飛び切りの題材だが、この藤井版こそベストという気がしている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)