映画「プラダを着た悪魔」や「レ・ミゼラブル」などで知られる女優アン・ハサウェイが、32歳にして若手女優としての旬は過ぎたと実感していると言います。もともと、ハリウッドでは「女優は若くないと良い役がまわってこない」と言われるほど年齢差別が横行していますが、「レ・ミゼラブル」(12年)でアカデミー賞助演女優賞に輝き、ハリウッドでも実力派女優の一人と言われるハサウェイでさえ、「最近は若い女優に役をとられるようになった」と身にしみて感じているのだとか。競争がし烈なハリウッドでは、次々と若い女優が出てきて役を奪われるのは仕方がないこととはいえ、32歳にしてすでにそんなことを感じているとは、恐ろしい限り。とはいえ、本人も20代前半の頃に50代の女性の設定で書かれた脚本の役を奪ったこともあり、「文句を言うつもりはない」とさらりとしたものです。

 確かにアカデミー賞にノミネートされている実力派のマギー・ギレンホールも、「37歳で、55歳の男性の恋人役を演じるには年をとりすぎているといって断られた」と告白したこともあり、30代の女優にとっては厳しい世界なのでしょう。しかし若手女優に取って代えられ消えていく女優がいる一方で、30代後半や40代、50代になっても第一線で活躍する女優もまだまだ大勢います。

 「キューティ・ブロンド」(01年)の大ヒットで一躍トップスターとなり、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(05年)でアカデミー賞主演女優賞に輝いたリース・ウィザースプーンも現在は39歳ですが、昨年は「わたしに会うまでの1600キロ」で再びアカデミー賞主演女優賞にノミネートされる活躍をしています。

 キアヌ・リーブスと共演した「スピード」(94年)で人気を博したサンドラ・ブロックは、30代で「デンジャラス・ビューティー」(00年)などでロマンチックコメディーに次々と出演し、40代に入ってからは「しあわせの隠れ場所」(09年)でアカデミー賞主演女優賞に輝き、13年にも「ゼロ・グラビティ」で再び主演女優賞にノミネートされるなど、50代に入った今も安定した活躍を見せている数少ない女優の一人です。

 近年のアカデミー賞ノミネートの常連となっているエイミー・アダムスは、30歳を過ぎてからの遅咲きの女優ですが、来年は「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」に出演が決まっており、40代に入っても変わらぬ活躍が期待されています。その美しさから「イタリアの宝石」とも称されるモニカ・ベルッチは、50歳にして今秋公開される「007 スぺクター」で最年長ボンドガールに抜てきされるなど、年齢を重ねるごとに魅力を重ねている女優です。他にも最近結婚したキャメロン・ディアスやジェニファー・アニストンも、40代になっても第一線で活躍している女優の代表。こうしてみると、ハリウッドにはまだまだ40代、50代で輝く女優がたくさんいることが分かります。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)