86歳にしてなお現役で映画を作り続けているクリント・イーストウッドが、次回作で2015年に起きた、国際特急列車で大規模テロを阻止した乗客を題材にした実話を手掛けることが明らかになりました。2009年にニューヨークを出発した飛行機が近郊のハドソン川に不時着した航空機事故を描いた「ハドソン川の奇跡」(16年)に次ぐ次回作として選んだのは、アムステルダム発パリ行きの列車内で銃を発砲したイスラム過激派の男性を取り押さえて大惨事になるのを未然に防いだ米国人大学生とオレゴンの州兵の実話。3人が作家ジェフ・E・スターン氏と共に執筆した著書「ザ・15:17・トゥ・パリス:ザ・トゥルー・ストーリー・オブ・ア・テロリスト、ア・トレイン、アンド・スリー・アメリカン・ヒーローズ」を基にした本作は、現在キャスティング中で年内にもクランクインする予定だといいます。

 年を取っても精力的に作品を世に送り続けているのは、イーストウッド監督だけではありません。「エイリアン」シリーズ最新作「エイリアン コヴェナント」が来月全米公開される79歳のリドリー・スコット監督も、早くも次回作として1970年代に起きたジョン・ポール・ゲティ3世誘拐事件を映画化することが発表されています。すでにプリプロダクションに入っているとのことですが、スコット監督はこれ以外にも第2次世界大戦でイギリス空軍とドイツ空軍がイギリス本土を巡って繰り広げた航空戦を映画化することも決まっており、80歳を目前にしてもまだまだ第一線で活躍しています。

 70代、80代の活躍が目立つハリウッドの映画監督ですが、昨年末に70歳になったスティーブン・スピルバーグ監督も衰え知らずです。ベストセラーSF小説「ゲームウォーズ」を映画化する「レディ・プレイヤー・ワン」の公開を来年に控えているスピルバーグ監督は、今度はトム・ハンクス、メリル・ストリープという名優とタッグを組み、米国防総省のベトナム戦争に関する秘密報告書の流出事件を基にした「ザ・ポスト」を制作することが発表されましたが、他にも宗教を題材にした「ザ・キッドナッピング・オブ・エドガルド・モルターラ」や、ジェニファー・ローレンス主演で実在した女性戦場写真家を描く「イッツ・ホワット・アイ・ドゥ」なども手掛けることが決まっています。また、2019年にはハリソン・フォード主演の人気アドベンチャー「インディ・ジョーンズ」シリーズ第5弾の公開も決まっており、今後数年は休む暇もなく映画制作に没頭する日々になりそうです。

 年1本ペースで映画を作り続けている81歳のウディ・アレン監督は、まもなく日本公開される「カフェ・ソサエティ」(16年)に次ぐ次回作として、今夏にはケイト・ウィンスレットとジャスティン・ティンバーレイクが共演する「ワンダー・ホイール」の公開を控えています。また、遠藤周作の小説「沈黙」を映画化したばかりのマーティン・スコセッシ監督も、次回作としてロバート・デ・ニーロとタッグを組んで実在したマフィアの殺し屋を描く「ザ・アイリッシュマン」の制作に取り掛かっており、74歳にしてまだまだ現役です。

 巨匠と呼ばれる映画監督たちの高齢化が進んでいますが、世界ではポルトガル出身のマノエル・ド・オリヴェイラ監督が最高齢となる105歳で「レステルの老人」(14年)をベネチア映画祭に出品しています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)