映画界最高の名誉とされる第90回アカデミー賞のノミネーションが23日に発表され、多様な顔ぶれが出揃いました。一昨年のアカデミー賞ではノミネートされた俳優部門の候補20人全員が白人だったことから「白すぎるオスカー」と批判されたこともありましたが、今年は主演男優賞に「ゲット・アウト」のダニエル・カルーヤと「ローマン・J・イスラエル、エスク」のデンゼル・ワシントンがノミネートされたほか、助演女優賞にも「シェイプ・オブ・ウォーター」のオクタビア・スペンサーが名を連ねるなど黒人4人がノミネート。また、男女格差が叫ばれる中で、「レディ・バード」でメガホンをとったグレタ・ガーウィグ監督が女性として唯一の監督賞候補入りを果たし、「マッドバウンド 哀しき友情」の撮影監督レイチェル・モリソンさんが女性として初めて撮影賞にノミネートされる快挙を達成しました。

 一方で、大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏が長年に渡って多くの女性にセクハラ行為を行っていたことを発端にした一連のセクハラ騒動も、少なからず影響を及ぼしています。今月7日に行われたゴールデン・グローブ賞で主演男優賞に輝いた直後に過去のセクハラ疑惑が浮上したジェームズ・フランコは、アカデミー賞では主演男優賞候補から落選。フランコは主演と監督を兼任した「ザ・ディザスター・アーティスト」で放送映画批評家協会が選ぶクリティックス・チョイス・アワードでも主演男優賞を受賞するなど有力候補と予想されていただけに、セクハラ疑惑が影響した可能性も取りざたされています。

 また、過去の少年へのセクハラ行為が発覚したケビン・スペイシーの代役として急きょ「オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド」に出演したクリストファー・プラマーは、見事に助演男優賞にノミネートされました。メガホンをとったリドリー・スコット監督が、すでに撮影済みだった作品からスペイシーの出演シーンを全てカットし、プラマーを起用して再撮影を行ったことが話題になりましたが、プラマーの候補入りで有力候補といわれた「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーが落選する結果となりました。

 セクハラした女性から訴えられた過去を持つ「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で昨年のアカデミー賞主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックは、3月4日に行われる授賞式でのプレゼンターを辞退することを表明し、関係者を安堵させたと言われています。アカデミー賞では前年の主演男優賞受賞者が主演女優賞のプレゼンターを務めることが慣例になっていますが、和解金を支払って示談が成立しているものの「タイムズ・アップ」や「Me Too」といったセクハラ被害者支援の運動が盛り上がる中でのアフレックの出演には批判が出ることが予想されていました。欠席の理由は明かしていませんが、セクハラ問題が注目されていることが原因と見られています。

 セクハラ被害者支援のために出席者たちが黒いドレスで出席したゴールデン・グローブ賞やアーティストたちが「抵抗」などを意味する白いバラをつけて登場したグラミー賞のようにアカデミー賞もセクハラ問題が色濃く反映する内容になると予想されるだけに、ダスティン・ホフマンやシルベスタ・スタローン、マイケル・ダグラスら他にもセクハラ疑惑が浮上した俳優たちが授賞式に出席するのかどうか、その動向にも注目が集まっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)