俳優三宅裕司(69)は自身の過去と現状を重ね合わせている。芸能界復帰は無理かもしれない。そう宣告されたほどの大病から復活した過去を持つ三宅ならではの観点から、明日のためのエールを送った。6月に開催予定の舞台「熱海五郎一座」の現状についても、素直な胸中を語ってくれた。

     ◇    ◇    ◇

今の日本は明日の光が見えない、本当に不安だらけの毎日なんですが、私は過去の経験を思い出して前向きな自分を取り戻すようにしています。

今から9年前の11年8月、脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症で、神経が腰のあたりで止まってしまい下半身がまったく動かなくなりました。「リハビリを頑張っても障がいが残り、芸能界復帰は無理かもしれない」と事務所は言われたそうです。私は重い雰囲気の中、とにかく今の状況を受け入れようと思いました。そんな時、テレビで東日本大震災被災者の人たちの頑張っている姿を通じて、日本人のすごさが世界で話題になっている、というニュースを目にしたんです。こんな大変な状況の中、復興を目指してきちっと整列し、笑顔でお互いに助け合っている。

それを見た時に「落ち込んでいた自分が恥ずかしい、俺も同じ日本人だ、絶対に復活してみせるぞ!」という思いがふつふつと湧いてきて、リハビリを頑張ることができました。

今の自分は、いやおそらく日本中の人が、あの時と同じ精神状態です。大事なのは、1人1人がこの大変な状況を受け入れて「自分は過去さまざまな困難を乗り越え、世界から称賛されている日本人なんだ」という自覚と誇りを持つことです。そして必ず復活しましょう。

6月に開催予定の熱海五郎一座については、政府からの自粛要請期間まではその指示に従い、状況を見て最終決定をするということになっています。

演劇は1年以上前から劇場を押さえ、作家と会議を重ね台本を作り、ゲストを決め台本の細部を何度も書き直し稽古に入ります。それまでに各セクションのスタッフとの打ち合わせも並行して進めるのですが、どこかで「公演中止かもしれない」と思いながらの打ち合わせはなかなかつらいものがあります。でも、新橋演舞場で、満席のお客さんの笑顔に会えるのを楽しみにしています。(構成・川田和博)

◆三宅裕司(みやけ・ゆうじ)1951年(昭26)5月3日、東京都生まれ。79年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターを旗揚げ。ニッポン放送「三宅裕司のヤングパラダイス」、日本テレビ系「THE夜もヒッパレ」で人気に。04年から「伊東四朗一座」「熱海五郎一座」を上演。07年ビッグバンド「三宅裕司&Light Joke Jazz Orchestra」結成。趣味はドラム、落語、ギター、三味線。血液型B。