2時間ドラマを中心に活躍する女優山村紅葉さん(55)を取材した。山村さんの母は、「ミステリーの女王」と呼ばれた山村美紗さんで、母の小説を原作にしたドラマなど500本を超える作品に出演。「2時間ドラマの裏女王」とも言われている。

 取材したのは、「二月名作喜劇公演」に出演中の東京・新橋演舞場で、楽屋に入って驚いた。キティ・ファンの「キティラー」と聞いていたが、楽屋はキティグッズで埋め尽くされていた。ドレッサーからたんす、テーブル、そして楽屋着までキティ・グッズだった。キティを親友であり、恋人であり、子供のような存在と言うだけに、キティ柄のティッシュは「ごめんね」と言って使うが、トイレットペーパーは申し訳なさすぎて、使えないという。

 早大政経学部の学生時代に、母の小説を原作にしたサスペンスドラマ「燃えた花嫁」で女優デビューした。「就職する前の記念に」という軽い気持ちだったが、卒業までに20本ほど出演した。卒業後は国税調査官として「マルサの女」になったが、結婚を機に退職。再び女優活動を始め、それが30年も続く。当初は母の作品や、母の親友だった西村京太郎作品に出演したが、今はドラマだけでなく、舞台、バラエティー番組にも活動の場を広げる。

 晩年の母美紗さんは「私が死んだら紅葉がドラマに出られなくなる」と、体調不良をおして作品を書いていたという。山村さんは「私がこうやって女優をやれるのも母のおかげ」と感謝するが、今や母とは関係のないところでの活躍が多くなった。母の七光から脱して、「母も安心してくれるかな」としみじみ話した。【林尚之】