今回もミュージカル「レ・ミゼラブル」の話です。上演中の帝国劇場では6月11日から17日まで30周年スペシャルウィークとして記念カーテンコールが行われ、87年の初演に出演した鹿賀丈史、岩崎宏美、島田歌穂、鳳蘭をはじめとした国内外のキャストが日替わりで登場。30周年の思い出や現在の出演者との歌唱などで、連日、1時間に及ぶカーテンコールで盛り上がっています。

 初演で岩崎ファンテーヌの「夢やぶれて」、島田エポニーヌの「オン・マイ・オウン」を聞いた時は、取材を忘れて、涙が出てきたものです。ジャン・バルジャン、ジャベールをはじめとしたプリンシパルキャストはダブル、トリプルで、この30年で多くの人が演じています。厳しいオーディションを経て、出演している人ばかりだから、それぞれに個性があって、魅力的でした。前回は出演者にもドラマがあると書きましたが、現在のキャストにもドラマがあります。

 まずはバルジャンとジャベールを演じている吉原光夫。劇団四季出身で、「美女と野獣」のガストン、「ライオンキング」のシンバなどを演じましたが、07年に退団。四季時代の仲間と「響人」を結成し、出演だけでなく、演出も手掛けました。そして、11年に32歳という日本最年少でバルジャンに抜てき。バルジャンデビューの日のカーテンコールでは、吉原の友人たちの大きな歓声が印象的でした。実力派がようやくひのき舞台に上がったことの喜びにあふれ、ちょっと感動的でした。

 13年からジャベールを演じている川口竜也も苦労人です。関西を中心に活動し、数多くの作品で主演を務めていましたが、08年、41歳の時に「ミス・サイゴン」出演を機に上京。13年からジャベールで初参加し、15年版を経て、すっかりジャベール役者の貫禄を見せています。

 マリウスの海宝直人は前回15年からの出演ですが、16年には数々の演劇賞に輝いた「ジャージー・ボーイズ」に出演し、劇団四季「ノートルダムの鐘」にカジモド役で主演しました。大きな経験を経て一皮むけ、より魅力的なマリウスになっています。

 今回のアンサンブルの中には、16年に帝劇で開催された「集まれ!ミュージカルのど自慢」ファイナル出演者もいます。多くの人に愛され、そして、多彩なキャストに恵まれた「レ・ミゼラブル」は次なる40周年に向けて進化し続けていくことでしょう。【林尚之】