話題のミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー」のプレビューを見てきた。いい舞台だった。また、見たいと思った。再演ではなく、今年初めて上演されたミュージカルのベスト1となるのは間違いないだろう。

 何よりも主演のビリー、友達のマイケルをはじめとした子役たちが素晴らしかった。大規模なストライキで揺れる英国の炭鉱町を舞台に、少年ビリーがバレエの魅力のとりこになり、さまざまな偏見を乗り越えてロイヤルバレエ学校を目指すストーリー。00年に公開された映画「リトル・ダンサー」のもとに、05年にエルトン・ジョンが作曲を担当したミュージカル版がロンドンで初演された。08年には米ニューヨークで上演され、その後も世界各国で上演されている人気作です。数年前にロンドンで観劇したけれど、日本での上演は難しいだろうなと思った。ビリー役はバレエ、タップ、ヒップホップ、アクロバチックな器械体操歩までこなさなければいけない。2時間半の上演時間中、ほとんど出ずっぱりで、これだけ踊れる子役の男の子が日本で何人いるだろうかという疑問があったからです。

 しかし、今回の舞台を見て、まったくの杞憂(きゆう)だったことが分かった。ビリー役には5人の子役がキャスティングされていますが、なんと1年半もかけてレッスンを積んできた。15年11月にビリー役を公募すると、1346人の応募があり、書類選考を通過した450人は、昨年4月に海外スタッフによるダンス、歌、芝居の審査を受けて、10人の候補者が選ばれた。

 そこから、画期的な長期育成型オーディションが始まった。クラシックバレエを熊川哲也主宰するKバレエスクール、タップをタップ第一人者のHIDEBOHがプロデュースするHiguchi Dance Studio、アクロバットを体操指導で定評あるコナミスポーツクラブが担当する強力布陣でに、同5月からレッスンがスタート。同8月の集中レッスンを経た3次審査で10人から7人に絞り込まれ、同12月の最終オーディションで4人が決定した(その後、1人が追加されて5人に)。

 ビリーの父親役で出演する吉田鋼太郎は「大人は2カ月の稽古だけど、ビリーは1年半のレッスンを重ねてきた。(プレビューで)彼らのタップ、バレエのたびに、拍手と歓声が鳴りやまなかった。頑張れば、結果が出るんだと、あらためて知らされた」と子役たちの頑張りに感動していた。ビリーを演じるのは加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未來和樹、山城力の5人。東京公演は10月1日まで、10・11月に大阪公演もある。4カ月の公演で彼らはさらにレベルアップするだろう。そして、ロンドンでの初演前から日本での上演に向けて動いていたという制作陣の努力も、最高の形で報われた。【林尚之】