高麗屋3代の襲名披露祝賀会が先日、東京・帝国ホテルで行われた。松本幸四郎(75)が2代目松本白鸚、市川染五郎(44)が10代目幸四郎、松本金太郎(12)が8代目染五郎を来年1月の東京・歌舞伎座で襲名する。37年ぶりに親子3代で襲名する3人を祝福しようと会場には豪華な顔触れが集まった。小泉純一郎元首相、王貞治、みのもんた、坂田藤十郎・扇千景夫妻、尾上菊五郎・冨司純子夫妻、水谷豊・伊藤蘭夫妻、小田和正、北大路欣也、片岡愛之助・藤原紀香夫妻、名取裕子、林真理子、三谷幸喜、コロッケら1300人を数えた。

 最初にあいさつに立った染五郎は「高麗屋の芸の力を信じまして、歌舞伎の戦力になるよう、天に向かって歌舞伎の舞台を生涯勤めたい」と誓った。金太郎は1月の「勧進帳」で義経、2月の「七段目」の力弥を演じることに触れて、「ゆかりの演目を務めることができてうれしく思います」。昨年12月の襲名会見では緊張であまり言葉を発しなかったが、見違えるような堂々としたあいさつだった。祝賀会前の会見でも「2人とも歌舞伎以外のことや新作など新しいことに挑戦してきた。自分もそうなりたい。代々の染五郎がやってきたことも受け継いで、自分なりの染五郎もつくっていきたい」と話した。

 幸四郎も、37年前に父8代目幸四郎が初代白鸚、当時の染五郎が9代目幸四郎、当時の金太郎が7代目染五郎と親子3代で襲名したことを振り返りつつ、「2度目の3代襲名ができるなんて信じられない。夢のようです。来年は歌舞伎座ができて130年、歌舞伎座のさよなら公演が始まって、私どもの襲名で10年。私どもの襲名はもしかしたら、平成最後の襲名となるかもしれません。自分が頑張ってきたものを息子に与える、その心を大事だと思ってまいりました」と感無量の様子で話した。

 会場には名店のすしや料理が並んだ。来場者に渡された引き出物は、10代目幸四郎のサインが入った白い布のコースター、ガラスのしょうゆ差し、3人の写真がプリントされたせんべい、高麗屋の歴史をつづった小冊子だった。

 最後にお礼のあいさつをした染五郎は、初めて幸四郎の浮線蝶の紋が付いた黒紋付姿で登壇した。「今日をスタートといたしまして、浮線蝶の紋をつけた10代目松本幸四郎、いいえ、10代目はもうつけません、松本幸四郎はこの世に一人、松本幸四郎として立派にこの紋付を着られるように、1日も早く着られるように勝負してまいりたいと思っております」と宣言すると、大きな拍手が起こった。

 多くの人は、来場者がご祝儀をいくら包んだかが気になるだろうが、高麗屋は「来ていただくことが喜びです」と、祝儀などをすべて辞退した。ここにも、高麗屋の心意気がある。【林尚之】