昨年7月に亡くなった三浦春馬さんが出演したミュージカル「キンキーブーツ」が来年秋に再演されることになり、三浦さんが演じたドラァグクイーンのローラ役を親友の城田優(35)が引き継ぐことが先日、発表された。

「キンキーブーツ」は日本で16年に初演され、19年にも再演されたけれど、三浦さんの死で再再演が危ぶまれる事態になっていた。それはまさに体当たりで演じた三浦さんのローラの存在感があまりにも大きかったからだ。三浦さんは13年にブロードウェーでこの舞台を見て、ローラ役を熱望して実現した。10センチ以上のピンヒールブーツを履いて歌い踊るために徹底的な肉体改造と歌の猛レッスンを受けて初演に臨み、「ミュージカル俳優」としてさまざまな演劇賞を受賞した。再演もチケットはすぐ完売する人気ぶりで、主催者も再演の終了直後から再再演を計画していた。しかし、三浦さんが亡くなり、ローラ=三浦というイメージが強いこともあって、主催者側も一時は再再演を断念しそうになった。

しかし、そこで浮上したのが、三浦さんとはプライベートでも仲が良く、ミュージカル俳優としても互いに刺激し合う関係にあった城田だった。オーディションに参加し、ブロードウェー側の了解も得て、ローラ役での出演が決まった。ただ、これが三浦さんの演じた役でなかったら、城田もあえて挑戦することはなかったかもしれない。他の俳優で評判の高かった役を引き継ぐのは、前者と比較されるというリスクも伴うからだ。

しかし、城田には、三浦さんが愛し、俳優としてすべてをかけて取り組んだ「キンキーブーツ」という舞台を継続させたいという思いだけがあった。それは「春馬が愛したローラという役を、とにかく一生懸命演じさせていただきます」というツイッターでのコメントに凝縮されているだろう。今回のローラ役の継承は、友情のリレーでもある。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)