先日、正午に始まって、終わったのは午後9時前という舞台を見た。世界的に大ヒットした人気ゲームを原作にした「新作歌舞伎ファイナルファンタジー10」(4月12日まで)で、会場は豊洲市場に隣接するステージアラウンド東京。前編・後編の通しで、SS席の料金は3万2000円だった。

最近は「ワンピース」や「風の谷のナウシカ」など漫画、アニメの歌舞伎化はあったけれど、ゲームの歌舞伎化は初めてという。ゲームとは縁がなく、この「ファイナルファンタジー」についての予備知識もまったくなかったけれど、エンターテインメントとして楽しむことができた。

何より、企画・構成も手がけた尾上菊之助をはじめ、中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村米吉、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六ら歌舞伎俳優の何でも歌舞伎として見せてしまう対応力の見事さをあらためて感じる舞台だった。菊之助は頼りない少年ティーダの成長がすがすがしく、米吉もユウナを魅力的に演じていた。獅童のアーロン、松也のシーモア、彌十郎のジェクトはビジュアル的にもはまり役だった。

4月には同様に上演時間が8時間に及ぶ舞台が新国立劇場で始まる。1980年代のニューヨークを舞台にした人間ドラマ「エンジェルス・イン・アメリカ」で、1991年に初演され、日本では94年に上演された。今回は2部作の一挙上演で、演出は上村聡史、フルオーディションで選ばれた鈴木杏、山西惇、那須佐代子、水夏希、浅野雅博らが出演する。

第一部「ミレニアム迫る」が4時間、第二部「ペレストロイカ」が4時間(ともに休憩含む)。通しで見ると、正午に開演し、終演は午後9時半近くになるから、2日間に分けて見るのもいいかもしれない。こちらは第一部・第二部通し券の料金は1万3800円で、「ファイナル」に比べると、手頃感があるけれど、その内容は深くて、ずっしりと重い。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)