当欄で10日前くらいに、神奈川・相模湖で「1人スワンボート」をした日誌を書き、最後に「『相模湖編』たぶん続く」と記したことを記憶している読者の方はそもそも全国で2人以下であろうが、恐らく、全世界で「最も期待されていない続編」を書きたい。

実はその日、「1人スワンボート」だけでなく、その前には相模湖近くの高台にある「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」内にある遊園地にも突撃し、そこでは「1人遊園地」を敢行したのだ。

スワンボートでも「おひとり様状態」を業者の人に不審がられたが、中年男の「1人遊園地」もけっこうキツい。同じく、フォレスト内にある日帰り温泉「さがみ湖温泉うるり」を、筆者が担当している温泉面の連載記事用取材もかね訪れるのがメーン目的だったのだが、はっきり言ってそこに遊園地があるのであれば、行かねばならないというのが筆者の基本的スタンスである。

チケットを買って園内に入り、いくつか軽くアトラクションを回る。ただ、本当に行きたいのは標高420メートル山の上にある観覧車や絶叫アトラクションだ。そこに行くためにまず、リフトに乗った。

観覧車に乗るためリフトに単独搭乗…周囲に1人で遊園地に来ている中年男は一切見あたらないが、もう引き返せない
観覧車に乗るためリフトに単独搭乗…周囲に1人で遊園地に来ている中年男は一切見あたらないが、もう引き返せない

頂上に着き、悠然と絶景を見渡し、気分上々。ただ、周囲を見渡すと、1人で遊園地内を回っている中年男は恐らくほかにおらず、家族やカップル、若者グループばかりであることにも気づく。

「GOGOアンパンマン」なる、乗りもののアトラクションに一瞬乗ろうかと思ったが、いやさすがにこれはまずいな…と思って断念した際、その一連の状況が若干、挙動不審になったのも事実。

さすがに怪しい中年男がこれに1人で乗っていたら完全にまずいだろう…と理性がストップをかけた
さすがに怪しい中年男がこれに1人で乗っていたら完全にまずいだろう…と理性がストップをかけた

徐々に周囲からの「あれ? なんであの目付きの悪い中年男、1人で遊園地にいるの? 何の目的なの?」みたいな感じで見られているのではないかという視線を感じ始めたのだが、そこで妥協したら「1人遊園地」は楽しめない。

あたかも「本当は家族や友人たちと遊園地に来ているものの、たまたまこの時間帯だけ単独行動をしている」的雰囲気を全身からフルに放ちつつ、笑顔で歩き続けることで乗り切るのが「1人遊園地」満喫術における最大のポイントだ。

気にせず観覧車乗り場にたどりつき、恐らく係員も「この中年男性、1人だけだけど珍しいな…」的なことを思ったと邪推されたが、あくまで「たまたまその時間帯だけ単独行動をしているだけで、決して孤独なわけではない」的な“オーラ”を放ちつつ、ゴンドラに悠然と乗り込む。

ついに観覧車に搭乗しゴンドラを1人で独占。1周13分かかるが7分目くらいから「私は一体、何をしているのか」と妙な虚無感に包まれる
ついに観覧車に搭乗しゴンドラを1人で独占。1周13分かかるが7分目くらいから「私は一体、何をしているのか」と妙な虚無感に包まれる

4人掛けの広いゴンドラ内部は筆者1人。どんどん高度が上がっていき、美しい山々や相模湖の全景が見えてきたからたまらない大パノラマだ。友人らとの会話を気にせず、ゴンドラの天気分と絶景を独占成功。これだから「1人遊園地」はやめられない。

1周13分の観覧車に満足した後は、絶叫アトラクションへ。まずは「極楽パイロット」に乗車だ。小型飛行機のような形状のシートに着席。それが最高速度30キロで大空を約2分間、回りながら急上昇したり急降下するのだ。座席そのものをレバーで操作して、キリモミ回転までできるという。

絶叫アトラクション「極楽パイロット」に勇躍搭乗するも恐怖のあまり断末魔の悲鳴…人生経験が数十年少ないはずの隣の小学生はキャッキャと喜んでいたがどういうことなのか
絶叫アトラクション「極楽パイロット」に勇躍搭乗するも恐怖のあまり断末魔の悲鳴…人生経験が数十年少ないはずの隣の小学生はキャッキャと喜んでいたがどういうことなのか

最初は「たいしたことないだろう」とたかをくくっていたが、スタート直後からド迫力の飛行に全身が完全硬直。「ウゲ~ッ」「ヒョエ~」などと情けないことこの上ない悲鳴を上げ続け、特に急降下する際は「ギャオ~」と断末魔の叫びを上げてしまう。何とかクリアしたが、極楽パイロットを同時間帯に単独で利用していたのは、またも筆者だけであることが判明した。

本来、もう1つの絶叫アトラクション「大空天国」もハシゴしたかったのだが、大空に向かって超巨大ブランコのような乗りものが放りだされ、それが谷底へ急降下し乗客の「キャー」という絶叫がこだましている様子を見ていると、「こりゃ、ほんとうに身が持たん…」と完全に戦意喪失。“敵前逃亡”する結果となった。

もう1つの絶叫アトラクション「大空天国」。乗り場まで行ったもののド迫力の急降下を見て完全に戦意喪失し“戦術的撤退”を決定
もう1つの絶叫アトラクション「大空天国」。乗り場まで行ったもののド迫力の急降下を見て完全に戦意喪失し“戦術的撤退”を決定

結局、「さがみ湖温泉うるり」に駆け込んで高濃度炭酸泉で泡まみれになって、「極楽パイロット」の急降下恐怖ですくみ上がった全身を何とか心身をいやしたのだが、さらにいやしきるため、前回記した「1人スワンボート」を敢行したというわけ。

絶叫アトラクションから“敵前逃亡”するという挫折感も味わったが、とはいえやはり「1人遊園地」は何とも言えない楽しさがある。

実は11月3日から、この「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」では関東最大級のイルミネーションイベントとされる「さがみ湖イルミリオン」が午後4時から開催中。約600万球もの電飾が光とやみの世界を作り出すという圧巻の幻想的イルミネーションが展開されており、ほぼ確実に「カップルだらけ」「若者グループばかり」と目されるが、こうなりゃ、これにも来週あたりの夜、単独で行く「1人イルミネーション」をやるか。

【文化社会部・Hデスク】