世界12カ所に、地球外からと思われる巨大な飛行物体が現れた。言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、相手のメッセージを読み取るよう軍から依頼される。宇宙と人類との壮大な物語と、ルイーズと今は亡き娘ハンナとのごく個人的な物語が入り交じるSF作品だ。

 娘ハンナとの回想シーンは、ルイーズの人生、人となりを紹介するだけではない。どうしてここで急にハンナを思い出し、夢に見るのか。記憶が切れ切れなのはなぜか…。どうして、なぜが積もって、ルイーズと同期して苦しくなる。

 いろんな概念に縛られていることに気付く。まっすぐな矢印で進むと思っている時間の概念、疑問符を付ければ質問になると思い込んでいる言語の概念。そういえば、SF作品の概念にも縛られていたかもしれない。

 SFでもあり、理解しがたい相手とのコミュニケーションの物語でもあり、家族、親子、あるいはただ1人の人間の生き方を描いた物語でもある。冒頭で「宇宙と人類との壮大な…」と書いたが、その印象だけで見ると、ある意味大変なことになる。原作小説の題名は「あなたの人生の物語」なのだ。【小林千穂】

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