水谷豊が長年温めてきた、タップダンスをモチーフにした物語を、初監督、主演で送り出した。

 水谷が演じるのは、かつての天才タップダンサーで、大けがで踊れなくなった渡真二郎。かろうじてショービジネスの世界に身を置いているが、酒におぼれる日々を送っている。旧知の劇場オーナーに頼まれ、劇場最後のショーを演出することになる。

 物語の構想が生まれたのは、水谷が20代のころだったという。当時は若いダンサーの青春物語に思いをはせたそうだが、当作の主人公は若者たちを、厳しくも見守る男だ。水谷自身が年月を重ねたからこそだろう、物語も登場人物も、何層にも重なった味わい深い物語になった。

 ラストショーを目指す若いダンサー役には、本物のダンサーたちが集まった。超絶技巧の足技に目をみはり、タップってすごいと素直に感動した。若者たちが背負うプレッシャーやそれぞれの背景の描き方も丁寧で、いつの間にか応援しているような気持ちに。

 水谷、旧知の劇場オーナー役の岸部一徳、従業員役の六平直政の3人のユニットもいい。やや長いと思わせる場面もあったが、思い入れの深さゆえだろう。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)