職場のセクハラという大きな問題に正面からぶつかった作品。16年7月に起きた全米最大のニュース専門放送局「FOXニュース」で起きた実話をもとに描く。同局を解雇されたベテランキャスターのグレッチェン・カールソンが、同局の会長兼CEOのロジャー・エイルズからのセクハラ行為を告発。全米を揺るがした事件の深刻さを伝えつつも、あらゆる視点でみられるように構成されている。

「言うことを聞かなければ…」。強大な権力者に対し、勇気ある戦いを繰り広げた女性キャスターたちを、ハリウッドを代表するシャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーが演じる。

最初の告発者となる葛藤をキッドマンが全身で切々と表現。看板キャスターのメーガン・ケリー役、セロンの怒りの演技にすごみを感じた。前半、やや話の展開が速すぎるところもあるが、後半はセクハラが助長された社内の土壌が詳細に描かれている。最大の見せ場は、本作で2度目のアカデミー賞のメーキャップ・ヘアスタイリング賞に輝いたカズ・ヒロ(辻一弘)さんの特殊メーク。セロンをケリーとうり二つに変身させた。スゴ技だ。【松浦隆司】

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