「オズの魔法使い」のドロシー役で知られるジュディ・ガーランドの晩年を、レネー・ゼルウィガー主演で描いた。

4歳でステージに立ち、「オズ-」で一躍スターに、名作ミュージカルに次々に主演したころの華々しい話、ではない。46歳、住む場所を失い、ギャラを求めて行ったロンドンのクラブでの公演だ。アルコールと薬物の常用でボロボロになり、1人バスルームにこもる姿が痛々しい。それでもひとたびステージに立てば、一瞬で観客を引き込む歌唱力。そのギャップもまた、スターの光と影だ。

当作でゼルウィガーはアカデミー賞主演女優賞を受賞した。大納得だ。全曲を歌い、スリムすぎるほどの体を仕上げた。素顔は「ブリジット・ジョーンズの日記」の面影をいまだに感じさせるベビーフェースだが、孤独と苦労を深く刻み、繊細で揺れる瞳を見せてくれる。

歌はどれもすばらしい。「オズ-」の名曲、「虹の彼方に」ももちろん登場する。いつまでも頭の中に残ったのは、ファンのピアノの伴奏で歌った「ゲット・ハッピー」。優しいジュディがよく分かる、当作の光でもある場面だ。

【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)