冒頭で描かれる、川の字になって寝る親子3人…その画面中央やや左に、目がくぎ付けになる。執拗(しつよう)なまでに繰り返し映し出される、パンパンにはち切れそうな赤パンツ。その尻の主が、水川あさみだから驚きだ。5キロ増量して撮影に臨んだ水川の、でっぷりした太ももや腰回りを接写した映像は、この映画しか見られないだろう。

14年「百円の恋」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した人気脚本家・足立紳氏が、妻の晃子さんとの実生活をモデルに書いた自伝的小説を実写化した2本目の長編映画。足立監督を投影した、うだつの上がらない脚本家の豪太を浜田岳、晃子さんを投影したチカを水川が演じ、足立監督の自宅でも撮影を行った。

全編にわたって、夫婦げんかが展開される。水川自身「37年生きて初めて発する言葉」と語るチカの罵声の数々と、それを受け続ける、救いようがないダメ人間の豪太を見ていると胃の奥に鈍痛すら覚える。それが全て吹き飛ぶのが悲しみ、怒り、絶望、愛情そして信じたい心…全ての感情が入り乱れた家族を映し出した最終盤の1シーン。今季の日本映画の中でも、出色だろう。見ないなんて、あまりにもったいない。

【村上幸将】(このコラムの更新は毎週日曜日です)