久しぶりにスカッとした爽快感を味わった。主人公は完全無欠のヒーローではなく、外見は地味で、目立った特徴もないダメおやじ。身の回りで起こる理不尽にもグッと耐え、決して歯向かわない。周囲から軽んじられ続けるおやじが実は、とんでもない最強のおやじだったら…。

冒頭の約5分で主人公ハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク)の生活を描く。ルーティンは朝のジョギング、ゴミ出し、妻のポスターを見ながらの懸垂。郊外の自宅から義父が営む金属加工会社に路線バスで通い、事務仕事の単調な日々。自宅のダブルベッドは妻がクッションを置き、間仕切りされるトホホさだ。

ある夜、自宅に2人組の強盗が押し入るが、反撃できず家族からさらに失望されてしまう。数日後、娘から強盗がネコの首輪を盗んだことを告げられると、表情が一変。ダメおやじがブチ切れ、覚醒する。

バスでチンピラ相手に大暴れ。このバス・ファイトがロシアンマフィアとの激闘につながっていく。ラストへ向けて小気味いいテンポで進みながら、なぜ強いのか? その秘密が明らかになっていく。前のめりに楽しめる痛快作だ。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)