極度の潔癖性の青年(林遣都)と、視線恐怖症の女子高生(小松菜奈)のラブストーリー。恋という感情は、頭の中にすみ着いた虫の仕業という設定なのだ。虫は生殖のため、恋の感情を宿主に起こすのだという。

脳内に虫がいる2人が近づき、恋心が芽生える。恋は虫が引き起こす感情という前提があるのなら、本当にラブストーリーなのか? と思ったが、見進めるうちまぎれもないラブストーリーだと思った。小松演じる佐薙が、この初めての感情は何なのか? と胸の辺りを押さえる場面は王道とも言っていいし、林演じる高坂が、部屋の中にかつていた恋しい人を思い浮かべる場面もまさに恋だ。

心に刺さるせりふもたくさんあった。潔癖性のためほぼひきこもりの高坂が言われる「自分の痛みには敏感なのに、他人の痛みには鈍いな」という言葉。佐薙の「君への気持ちがどんどん消えていく。つかもうにもつかまえられない」という言葉。

少々グロテスクな部分もあったりといろいろな設定をまとっていながらも、コアな部分がピュアだった。林と小松の、繊細な表情に見入った。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)