ファミチキがないファミマなんて……。先日、大阪・中之島の超高層ツインタワービル「フェスティバルシティ」の街開きを取材したときのことです。見慣れないファミリーマートを見つけました。

 緑と白と青の色調の店舗ではなく、黒と白と緑でした。3月に完成した「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」の地下1階にオープンした店舗の名称は「ファミマ!!」。日刊スポーツの大阪本社の近くにできました。店舗の内装は茶系統に統一され、床はフローリング、陳列棚にはコンビニらしからぬ商品が並んでいました。輸入文具や香水、コーヒーは100円ではなく200円。店構え、商品構成がひと味違います。

 同店によると「オフィスで働く人が毎日利用してもあきないように落ち着いたイメージをコンセプトにしました」。なるほど、通常のコンビニとは違い、ちょっとオシャレです。

 ところが…。レジの横を見ると、いつものアレがないのです。そう。ファミリーマートと言えば、ファミチキ。「ファミマ!!」の最大の特徴は? ファミチキがないことなのです。もっと言うと、揚げ物系がいっさいなく、揚げ物の陳列棚もありません。唐揚げが大好きな大食漢のオヤジ記者にとっては、なんともショッキングなハナシです。

 なぜファミチキがないのでしょうか? ファミリーマート(本社・東京都)に聞いてみました。

 「ファミマ!!」はファミリーマートの愛称「ファミマ」を店舗ロゴに使用した新形態の店舗だそうです。オフィスビルや大型商業施設などに入り、関西地区では中之島の同店が5店舗目、関東地区では東京・汐留のオフィスビル、虎ノ門ヒルズなどに26店舗あり、九州地区、東北地区に各1店舗あります。

 「ファミマ!!」1号店は03年10月、大阪・なんばに開業した「なんばパークス」にできたそうです。

 同社は「オフィスビルや大きな商業施設などではコンビニの使われ方も違います。立地によって求められているものがあり、商品、店内のデザインも含め柔軟に対応しています」。一般のコンビニとは一線を画すブランド戦略が狙いのようです。

 新タイプのコンビニのコンセプトは「Every Life、Every Fun」(すべての生活に楽しさを!)。便利さだけではなく、利用する人がワクワクするようなコンビニを目指しているとのこと。

 最も気になるファミチキについては「従来の店舗とは違い、『ファミマ!!』は新しいコンセプトで始めました。新ブランドに必要なものと必要でないものは何かを検討しました。ファミチキなどの揚げ物は必要ないと」。あえて看板商品を置かないことで、新ブランドのイメージを打ち出す戦略なのでしょう。

 コンビニ業界の競争が激化する中、新タイプのコンビニは出店場所に合わせて工夫を凝らし、他社との違いを出しています。新たな顧客層を開拓するため知恵をしぼっているのです。

 まあ、でも、コンビニ各社ともレジの近くにあるチキン商品は定番の1つ。各社ともこだわりがあります。06年発売の「ファミチキ」はやわらかくジューシーに仕上げるために、鶏のエサまでこだわっているそうです。

 ファミチキにこだわるオヤジ記者に「『ファミマ!!』は離れ小島にあるわけではありませんので、意外と近くに通常のファミリーマートがあると思います」。全国にファミリーマートは約1万3000店舗。言われてみれば、そうですな。ファミチキのないファミマもあり! なんだか、お気に入りの「和風だし醤油味」のファミチキが食べたくなってきた。よしっ! 会社から少し歩いてみるか。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)