肺腺がんで闘病中の「ET-KING」リーダー、いときん(38)が昨年12月28日、約5カ月ぶりに復帰したステージで、とてつもなく強烈なインパクトを放った。

 場所は、地元の大阪・ZEPPなんば。来年に控えた20周年イヤーへつなげる第1弾の全国ツアー・ファイナルだった。「ET-KING」が生まれ、暮らした大国町から徒歩10分ほど、数キロの“故郷”だった。

 「みんな、お父ちゃん、お母ちゃんにもろた体、大事にしろよ。公衆便所やないで。アルコール、添加物…体の中に毒、放り込んだらあかんで。自分の子供にタバコ吸わすやつ、おらんやろ。体の中に毒、放り込んだらあかん。病気になって体のことも、食べ物のことも、考え直した。な、病気になってから、治すんはたいへんやからな」

 飾りっ気のないストレートな言葉を客席に投げかけ、「みんな、生きろよ」「生きろっ!」と叫んだ。

 満員のファン、そしてセンコウ、BUCCI、KLUTCH、DJ BOOBY、コシバKENの仲間も、リーダーの言葉に聞き入っていた。コシバは「この数年、メンバーが1人天国に行って、でもやっと、昨年(一昨年)リスタートできて、そこで…」。14年に亡くなったTENNさんとの別れから再起した矢先の衝撃を涙声で振り返り、「でも、一番『なんでオレが』と思ってる人(いときん)が、一番すごい。この人に着いてきてよかった」と感謝した。

 ライブの模様をこう記すと、しんみり…しているようだが、実際はまったく違った。

 いときんが出演したのはアンコールだった。「ほな、いくで」と軽いかけ声で、「巡り会いの中で」「新恋愛」「ギフト」の3曲に参加。張りのある力強い歌声に、ファンも安堵(あんど)し、大歓声で迎えた。

 そして、最後の最後-最大の衝撃を与えた。「肺腺がんステージ4」で闘病中のいときんが、着ていたはっぴを脱ぎ捨て、シャツも脱いだ。上半身裸になった。センコウらは「おいおい、何のスイッチ入ってんねん」とつっこみ、客席からは「うおー」と歓声がこだま。闘病中の上半身は、鍛えられた肉体だった。

 メンバーも、客席からも「ムキムキやん」と総つっこみ。いときんは満面笑みで返し「今の僕を支えてくれてるんは、仲間です」と言い、メンバー、スタッフ、応援を続けてくれるファンに頭を下げた。そして「おいおい、しっかり体作りなおして、ステージに立ち続けることが、みんなへの御礼やと思ってるから」と約束した。

 力強さを十分に残した肉体のインパクトは、最大級の衝撃。約束はきっと守ってくれるはずだ。【村上久美子】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)