女優熊切あさ美(43)が東京・六本木の俳優座劇場で上演される「時来組版(ときぐみばん) 蒲田行進曲」(13~17日)で、ヒロイン小夏を演じて舞台初主演する。2010年(平22)に62歳で亡くなった劇作家つかこうへいさんによる不朽の名作。過去に根岸季衣、松坂慶子、大原麗子さんが小夏を演じた。熊切に舞台への思い、覚悟を聞いてみた。【小谷野俊哉】

★「松坂慶子さん存在感すごすぎ」

「蒲田行進曲」の伝説のヒロイン、小夏役。1980年(昭55)の初演では根岸季衣(69)、82年の映画では松坂慶子(71)、そして83年のTBSドラマでは09年(平21)に62歳で亡くなった大原麗子さんが演じた。深作欣二監督の映画では、小夏の元恋人の銀ちゃんを風間杜夫(74)、夫の大部屋俳優ヤスを平田満(70)が演じた。切なくてつらい、三角関係の愛の物語だ。

「舞台の主演は初めてです。ヤス役の木村恭介君と銀ちゃん役の泉堅太郎さんと一緒に頑張ります。映画は元々、見たことがありました。話が来て、つかさんのところからOKが出て決まった時は、大変な役を引き受けてしまったと思いました」

11月1日から始まった稽古。毎日、映画のDVDを擦り切れるほど見た。

「稽古の前に毎朝、見てから来るんですけど、松坂慶子さんの存在感すごすぎて。本当にいろいろな顔を持ってて、しかも奇麗で。最初は、すごくやりたくて受けたんですけど、途中でくじけそうになった時もあります。今までの舞台も、プレッシャーは感じて来ましたが、今回は非常に大きいです。自分の中で毎日、葛藤しています」

支えになっているのは、何度も共演経験がある時来組の俳優たち。時来組組長の泉堅太郎(56)は銀ちゃん役。

「泉さんは、何回も相手役をやらせていただいて安心感がある。泉さん本人も、銀ちゃんっぽいスター性があるんです。自分のことを好きって思いながらも、実はどっかで自信なかったり。でも、普段は皆のことを世話してくれる座長。そういうところも、銀ちゃんと通じるものがある」

夫の大部屋俳優ヤスを演じるのは、木村恭介(32)。

「元々、映画を見たキム(木村)が、ヤス役をどうしてもやりたいって持ち込んだ企画なんです。ヤスを、階段落ちをやりたいっていう思いから実現したんです。10歳以上年下ですから、最初に会った頃はお互い気を使っちゃって。でも最近は、やっと息が合うようになって来た。本番までにはいい感じになると思います。階段落ちは大変だけど、とにかくけがしないで最後まで頑張ってもらいたいなと思ってます」

★“3大涼子”憧れ「熊切涼子に…」

98年にアイドルクループ、チェキッ娘のメンバーとしてデビュー。解散後もグラビア、バラエティーで活躍した。

「芸能界に入りたくて、受かったオーディションがチェキッ娘なんですけど、元々は女優になりたかったんです。フジテレビの『やっぱり猫が好き』に出ていた室井滋さんが大好きで、TBSの『3年B組金八先生』に出たいと思っていました。でも、いろいろ受けて、たまたま受かったのがチェキッ娘。思っていたのとは、全然違いました」

思っていたのとは、全然違う形で足を踏み出した芸能界。

「それまでは、バラエティーっていうのが自分の中に全然なかったんですよ。元々が、そんなにしゃべる性格じゃなかったんです。デビューの翌年にチェキッ娘が解散することになって、ホリプロさんにお世話になることに。女優さんがたくさんいる事務所だと思ったら、ずっとバラエティー担当の方にお世話になって、10年いました(笑い)」

バラエティーで活躍しながら、女優としてもキャリアを積んで、たどり着いた舞台初主演。

「ここで変われたらいいなと思っています。映像作品とは声の出し方も違うし、あとはバラエティー番組だったら誰かが助けてくれる。もちろん舞台も誰かが助けてくれるけど、この小夏役をやる以上は、こちらが助けられるぐらいじゃなきゃいけない。気づいたらすごい大変で、やっぱり怖い。喉をつぶさないようにお酒の量を減らしています」

自分の前を歩いて光り輝き、憧れる目標の3人の女優がいる。

「好きなのが“3大涼子”で、篠原涼子さん、米倉涼子さん、広末涼子さん。米倉さんとは共演したことがなくて、広末さんとも1回ちょっとだけ。篠原さんは、バラエティーでご一緒させてもらいました。“熊切涼子”にしたいくらいです(笑い)。やめとておけって、言われてますが」

★スレンダーボディーも健在43歳

43歳になった。美しさが変わらない。スレンダーボディーも健在だ。

「とにかく好きなものをたくさん食べて、たくさん眠る。あとはもう運動、トレーニングですね。食べないダイエットとか一切しなくて、筋トレしています。あとキックボクシングもやっています。お酒は我慢せず、声がつぶれないように、飲みたい時に好きなように飲みます。あと、お休みの日は一切メークをしません」

女優に全力投球。結婚のことは考えなくなったという。

「結婚は願望がなくて。一時期、結婚したいっていう時期があった後に、なんかパーンってはじけて。今は独身が楽しいというか、1人が楽になっちゃって。多分、もう人と一緒に暮らせない気がしてます。1人が楽なんですよね。1人の時間を楽しんでるから。もちろん寂しい時もあるんですけど、犬がいるんで。犬がいなかったら結婚してたかもしれない。トイプードルを3匹飼ってます。『犬を飼ったら結婚できない』って言うけど、ああ、そういうことだなって思いました(笑い)。犬の顔が浮かぶと、夜も早く帰らなきゃって思いますからね」

デビューして25年。大きな影響を受けた存在がある。

「やっぱり志村けんさん。06年の初めての舞台が『志村魂』だったんです。普段は照れ屋さんなのかなっていう方で、すごく真面目で舞台の稽古でも誰より一番に来ていらっしゃいました。本当にプロという感じで、しかも優しかった。コントとかも教えていただいたんですが、お笑いに対しても、演技に関してもすごい方でした」

今年も残すところ1カ月を切った。

「レギュラーも続いているし、舞台初主演もさせていただいて、いい1年でした。来年は心に余裕を持って演技の方もやりたいし、ちょっとやっている中国語ももっと勉強したい。今、ちょうど、年を取ることを怖がらずに、いろいろなことを楽しめるようになりました」

アイドル、グラビア、バラエティー…いろいろなことを糧にして、女優の道をしっかりと歩んでいる。

▼小夏の夫ヤス役の木村恭介

5年前に時来組の芝居で初めて共演させてもらいました。初めて会った時から気を使ってくれる方で、ビックリしたのを覚えています。昨年、僕が主演した時来組公演「龍馬が翔ぶ」では相手役のヒロインを務めてもらって、子供まで生まれたから相性はバッチリです(笑い)。今回は1年ぶりの顔合わせで、先輩なので緊張しましたが、稽古を積んでだんだんとコンビネーションが戻ってきました。共演者に気配りをしてくれる方で、楽しく稽古が出来て本番が楽しみです。僕の階段落ちも期待してください。

◆熊切あさ美(くまきり・あさみ)

1980年(昭55)6月9日、東京都生まれ。98年に「チェキッ娘」初代メンバーも99年解散。06年、舞台「志村魂」、映画「猫目小僧」。10年、舞台「大改訂版!! そして龍馬は殺された」。16年、映画「ラブストーリーズ2 再会 禁じらた大人の恋」主演。18年、舞台「志士たち」。現在のレギュラーはテレビ東京系「じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~」(木曜深夜0時)ほか。趣味はボートレース、競馬、筋トレ。161センチ。80-60-83センチ。血液型A。

◆「時来組版 蒲田行進曲」

女優小夏(熊切)は大部屋俳優ヤス(木村)と結婚していた。だが、身ごもっている子の父親はスター俳優銀四郎(泉堅太郎)だった。銀四郎は、小夏をヤスに押し付けたのだ。ヤスは出産費用のため、危険な階段落ちに挑戦する。

舞台稽古の合間、笑顔を見せる熊切あさ美
舞台稽古の合間、笑顔を見せる熊切あさ美
熊切あさ美
熊切あさ美