今年の正月公演「ルパン三世」の大ヒットで、トップとして好スタートを切り、勢いに乗る雪組トップスター早霧せいな。九州出身で体育会系気質な男前ぶりに磨きがかかった。本拠地2作目「星逢一夜(ほしあいひとよ)」では、徳川吉宗治世下で改革に従事した星を愛する藩主の次男坊を演じる。ショー「ラ・エスメラルダ」では、熱いラテン・ナンバーのダンスで魅せる。兵庫・宝塚大劇場は17日~8月17日、東京宝塚劇場は9月4日~10月11日。

 美貌のトップは、口を開けば熱い。夏を迎えて、暑さ対策も男らしい。

 「氷で頭を冷やす。冷却スプレーより、氷が一番いいです。氷を頭、首の後ろにのせる。食事は食べられるときに、お米や炭水化物を。頭も働きますし」

 稽古場や舞台袖に多量の氷を常備。体はクールダウンも、心は常に熱い。

 「私は、余裕がない方がいいと思う。私がすてきだなと思う役者は、余裕たっぷりにやっている人じゃない。一生懸命に役を生きている人に共感するから」

 本拠地トップお披露目だった「ルパン三世」は、軽妙かつオシャレに仕立て上げた。今度は、架空の藩の次男坊・晴興役。星を愛する少年の暮らしは、兄の急死で急転。吉宗の改革を支えることが、平民の友人を苦しめ、苦悩する男だ。

 「いや~悩んでいます。簡単に手に入れられる役なんてないけど、久しぶりにガツン! ときています」

 身分違いの恋、友情も軸にある。通常は娘役に代わるところ、今回は10歳から早霧自身が演じる。「心情の流れにはいいんですが、10歳に見えるか? と」。役作りの一環として、実際の子どもを取材した。

 「偶然、女の子3人に会ったので、話し掛けたら9歳。もう自分の意志、意見をきっちり持っている。自分たちを子どもだと思ってない。ただ、ひとつの質問に対して、3人が一気に返してきて困りましたけど」

 殺陣もあるが軸は人間ドラマ。主人公は、宝塚のヒーロー像とは一線を画す。

 「後半の晴興は、かわいそうなぐらい、立場と心情がずれていく。いつも最終的には、脚本、演出した先生よりも、自分がその役を一番理解していると思っていますが、今回は、いつも以上に、私が理解してやるって気持ちが強いです」

 晴興は少年時代、1人で星を見ていた。早霧自身は「友だちもいたけど、1人で壁とキャッチボールをするのも好きでした」。晴興が愛する星は、小学生の時、課題で天体観測をした程度。「冬だったのでオリオン座やカシオペヤ座を。好きな星はオリオン座、探しやすいから」と笑った。

 前作は博多座で沖田総司、今作が江戸中期。次の本拠地作は「るろうに剣心」に決まり、和物が続く。「ここまで続くとは予想外。雪組のみんなも和物を好きになって、楽しんでくれている」。和物の雪組と呼ばれた組の伝統もある。「絶対に流れていると思う。引き継ぎたい」。雪組の看板を磨き、次世代へバトンを渡す使命もある。スリムな体に力がみなぎる。

 「おかげさまで体は健康。皆さまに支えられ『気』をもらって元気です。組子もやる気に満ちあふれ、みんなの気持ちにも押してもらっています。自主げいこはもちろん、個別に早く来て練習していて。その姿勢がとても熱いです」

 ショーはエメラルドをテーマにしたラテン調。お気に入りの色は「今は黄色! 今は! なんか元気になるから」。早霧の“熱”が組に、観客に伝わり、暑い盛夏の公演はさらに“熱く”なる。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・ノスタルジー「星逢一夜(ほしあいひとよ)」(作・演出=上田久美子氏) 江戸中期、徳川吉宗の時代が舞台。九州の三日月藩の次男坊、天野晴興は、里の娘・泉(咲妃みゆ)、源太(望海風斗)らと、天文学に夢中になり、友情を育んでいた。ところが、兄の急死で、晴興は江戸の将軍家へ仕えることになり、吉宗に取り立てられ、改革を進めていく。その結果、友が暮らす故郷は困窮を極めていく。

 ◆バイレ・ロマンティコ「La Esmeralda」(作・演出=斎藤吉正氏) エメラルドの海をバックに繰り広げられるラテン・ショー。

 ☆早霧(さぎり)せいな 9月18日、長崎県佐世保市生まれ。01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。宙組配属。06年「NEVER SAY GOODBYE」で新人公演初主演。09年に雪組へ。華麗な立ち姿と美形ゆえ、13年には「ベルサイユのばら」でオスカル、「Shall we ダンス?」でダンス教師のエラと、女役が続いた。昨年9月に雪組トップ。身長168センチ。愛称「ちぎ」。