星組新トップスター、北翔海莉は「柔軟で、新しいリーダー」を目標に掲げた。在位6年を超えた前トップ柚希礼音(ゆずき・れおん)とは、宝塚音楽学校時代から親交があり、星組の次代を託された。専科を経て18年目でのトップ就任。芝居、歌、ダンスすべてに卓越した技術、キャリアを武器に、本拠地お披露目公演「ガイズ&ドールズ」では、大地真央の当たり役に臨む。兵庫・宝塚大劇場は21日~9月28日、東京宝塚劇場は10月16日~11月22日。

 白のスーツに、ピンクのシャツ。色紙のメッセージには「是是非非(是々非々)」と記した。何色にも染まる白、そして、柔軟な発想で「前例のないリーダー」を誓う決意表明だった。

 「10人以上のトップさんを見てきた。それぞれのいいところを取り入れ、下級生が安心でき、そんな人いないっていうようなトップに」

 17年2カ月で就任は、大空祐飛の17年4カ月に次ぐ遅咲き。劇団レッスンにもいまだ通う劇団屈指の実力派。専科の3年間にスター格で全組に出演し、史上3人目の5組制覇を遂げた。もっとも、宝塚音楽学校時代は劣等生だった。

 「キャンバスは真っ白。(初舞台の)ラインダンスも同期生と同じラインに立てない。お稽古を重ねるしかない。でも、やれば結果が出るって、体験できた」

 趣味で始めたフラメンコ、サックス、三味線は本業に生きた。ついに専科から星組トップ就任の話が届いた。「努力すれば、やった分だけ答えが出る。次代を担う下級生に伝えたかった」。AKB48総監督の高橋みなみは「努力は必ず報われる」ことを、自分の人生をもって証明すると公言し、大所帯をけん引する。

 北翔も「そうですね。きれい事…という人もいると思うけど、私も同じ。そう伝えたい」と力を込める。

 何度も退団も考えたが、前花組トップ蘭寿とむら先輩に支えられた。「迷わないで導いてもらえた」。前星組トップ柚希との絆もある。1年後輩の柚希とは学校時代からのつきあい。ベルリン公演もともに選ばれ、柚希の初舞台「ノバ・ボサ・ノバ」でも共演した。

 「一番苦しかったときに一緒にいて、互いに刺激しあってきた」。柚希が6年にわたり率いた星組メンバーの前に初めて立つ前夜、柚希に電話をした。

 「具合が悪くなりそうなぐらい、緊張して。でも(柚希は)自分も不安だったと。『今の星組はみんな、ついてきてくれる。自分の思う星組を作って』って言われ、背中を押された」

 圧倒的なカリスマ性、卓越した身体能力で柚希が率いた星組は「妥協しない精神。ダンスも厳しく仕込まれ、表現力、団結力が強い。血と汗と涙と根性…のような」イメージがあった。

 柚希イズムを引き継ぎつつ、自由な空気を入れ込むつもりだ。「みんなと同じ目線で作り上げる、よき共演者でいたい」。新生星組を率いる本拠地お披露目は、大地真央の当たり役「ガイズ&ドールズ」のギャンブラー、スカイを演じる。希代のプレーボーイ役だ。

 「仲間役のネイサンをはじめ、キャラクターの立つ役が多いので、役者がそろう星組で、それぞれの色を出せる作品でよかった」

 主要キャストを多く経験してきた2番手の紅ゆずる以下、個性の光る星組に手ごたえを感じる。既に一部を率いた「大海賊」で全国ツアーを回り、トップの大羽根も背負った。

 「初めて羽根を背負い階段を下り、地響きのような拍手、歓声に立場を実感しました」。18年蓄えたエネルギーがついに、センターではじける。【村上久美子】

 ◆ガイズ&ドールズ(脚色・演出=酒井澄夫氏) 50年に米・ブロードウェーで初演され、傑作コメディーの評価が高く、再演を重ねる人気ミュージカル。宝塚では84年に大地真央、黒木瞳らの月組で初演、02年には紫吹淳、映美くららの月組で再演されている。

 舞台は48年頃のニューヨーク。ギャンブラーのスカイ(北翔)は、自他ともに認めるプレーボーイ。仲間のネイサン(紅ゆずる)と、女を一晩で口説き落とせるか賭けをするが、その相手は、お堅いことで有名な娘サラ(妃海)だった。

 ☆北翔海莉(ほくしょう・かいり)3月19日、千葉県生まれ。98年「シトラスの風」で初舞台。99年月組、06年宙組へ。歌、芝居、ダンスと3拍子がそろい、12年7月に専科。14年1月の星組公演「眠らない男・ナポレオン」で轟悠、水夏希に続き3人目のスター格での5組制覇。今年1月「風の次郎吉」で鼠小僧を好演。同5月、17年2カ月で星組トップに就き、全国ツアー「大海賊」主演。趣味はサックス、フラメンコなど。身長169・7センチ。愛称「みっちゃん」。