「ルパン三世」「るろうに剣心」と人気漫画原作の公演を成功させてきた雪組トップ、早霧(さぎり)せいなが、今度は名作映画をもとにした「ローマの休日」に臨んでいる。オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペックによる不朽の名作をミュージカル化。新聞記者役だけに、記者を逆取材して役作り。映画より若い設定の主人公を軽やかに演じている。中日劇場公演を終え、赤坂ACTシアターで公演中(7月10日まで)。梅田芸術劇場では7月30日~8月15日まで。

 王女を後ろに乗せバイクを走らせ、軽やかに階段を下りジェラートを持つ王妃に近づく。そして、真実の口に手をつっこみ驚かせ笑わせる。

 「“あの”場面、有名すぎますよね。全部あります。でも、ヘプバーン(の役)じゃなくてよかった」

 グレゴリー・ペックが演じた新聞記者を主人公とし、映画版より若年に設定された“宝塚版”を、劇団きっての芝居巧者、早霧が好演している。前作「るろうに剣心」では、演出の小池修一郎氏を「オリンピックに出場できるレベル」とうならせた身体能力を持ち、今作も軽快で軽妙。ルパン三世が“復活”したような爽快感を漂わせる。

 「タカラジェンヌはバイク禁止なので、制作発表で初めて乗りました。舞台は狭いので、すぐ曲がらなきゃ。右手(のアクセル)の調整が難しい。実際だと、風を切る感じは好きなんで、乗ってみたいかな? いや、寒がりだし、まぶしいのも嫌いだから、やっぱ、乗らないかな? ははは」

 快活な人柄がそのままキャラクターに生きる。開幕前の取材会でも、笑いが絶えなかった。実はこの取材会も、早霧は役作りに利用。何度も逆質問してきた。

 「自分勝手なところ、あります? ジョー(役柄)ってけっこうマイペースなんですよ。来る人は拒まないですよね? ね?」

 相手の懐に入るコミュニケーション力は、取材する側にも向いていそう。「え~っ? いやいや、文章力ないから無理ですよ

!」。記者には多様なタイプがいるが、原則として、取材はいかにいい材料を集めるかが肝で、その調理法は二の次だと言うと、「うそつき!」と笑って返した。

 「でも、そうか。そういう意味では、人に興味があるので…。(ローマの休日のように)酔っぱらってる人を見かけたら、無視はしないですね。大丈夫? と、声はかけますね」

 さらに、記者には発言の真意を探るため、その裏を考える習性があると言うと…。「あ、私もひねくれています! 私(記者に)合っているかな? (役柄の)ジョーじゃなくて、新聞記者に」とまた笑った。

 昨年、子役時代も演じた舞台の際は、近所の子供に“取材”した。常に全力投球。妥協を許さないゆえ、いつも難産になる。

 「トップの居心地とか感じている余裕はないですけど、今のこの、恵まれている環境には感謝してます」

 今秋にはトップ丸2年で、早霧も、雪組も、充実期。名作の重圧もはねのけ、まぶしいばかりの輝きを放っている。【村上久美子】

 ◆タカラヅカ・シネマティック「ローマの休日」(脚本・演出=田渕大輔氏) 名優グレゴリー・ペックと、オードリー・ヘプバーン主演の不朽の名作をミュージカル化。イタリアのローマを舞台に、新聞記者ジョー(早霧)と、欧州各国を歴訪中のアン王女(咲妃)との、つかの間の恋を描く。ジョーは映画版より若く、それゆえ功名心、野心も強く描かれる。

 ☆早霧(さぎり)せいな 9月18日、長崎県佐世保市生まれ。01年初舞台。宙組配属。06年「NEVER SAY GOODBYE」で新人公演初主演。13年に雪組。13年「ベルサイユのばら」でオスカル役。14年10月に「伯爵令嬢」でトップ初主演。昨年1月「ルパン三世」で本拠地トップお披露目。今年2月には「るろうに剣心」主演。身長168センチ。愛称「ちぎ」。