月組トップ娘役の愛希(まなき)れいかは、9月に退団するトップスター龍真咲との最後の1カ月に臨む。龍の退団公演「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」「Forever LOVE!!」が明日5日から東京宝塚劇場で開幕する。龍のことを語るだけで涙がこぼれそうだが、9月4日の千秋楽は「笑顔で送れるように務めたい」としている。

 男役だった愛希に娘役転向を勧めてくれた恩人、龍とともに去るのではなく、あえて見送る道を選んだ。

 「卒業に関しては、私自身も相談させていただいてきて。でも、龍さんから(退団を)お聞きしてからは、まず自分の中で混乱して…。そして、自分が続ける(残留)と覚悟を決めた時は…そうですね…」

 声を震わせ、涙をこぼす寸前になりながら、言葉を続ける。男役で入団しながら、2年目に龍の恋人役を演じ、龍の勧めで3年目に娘役へ転向を決意。その1年後に相手役に就いた。

 「神の声のよう。お相手役が決まった時は『私がいるから大丈夫』と言ってくださり、お披露目の初日が開いた瞬間、お客さまからの拍手を受けて、龍さんが真ん中で降りてこられた瞬間は忘れられない。今から始まるんだ! という気持ちは、すぐに思い出せます。龍さんがいなければ、私は舞台に立てていない」

 学年差は8年。「夫唱婦随」で進んできたコンビだった。就任時に龍から教えてもらった洋品店で、いまだ私服を買うという。転機は就任から本拠地6作目だった「1789」。ヒロインではなく、龍と同等に対立する立場のマリー・アントワネットを演じた。

 「それまで、龍さんがつきっきりで教えてくださっていましたが、1789では、相手役が下級生で、私が教えなきゃいけなかった。役が育ててくれました」

 今回の「信長-」は、天下取りにまい進した織田信長と、男役としての夢をファンに見せてきた龍を重ねて描く。愛希は「濃姫」こと正室の帰蝶役。時になぎなたを振るい勇ましく、不器用ながらもいちずに主人を思い続ける。心情的にも実際と重なる部分も多い。

 「おけいこが始まったとき、幕が開けたとき、どの瞬間も龍さんと(舞台を)させていただける月組は最後…と…。そう思うと、ほんとに悲しく、寂しいので、考えないように。涙もろいので、危ないと思ったら、体を、太ももとか、つねって我慢しています」

 龍はサヨナラショーも「笑顔で送ってもらいたい」と望んでおり、愛希も「私も最後まで笑顔でいられるように」と話す。

 次期トップ珠城(たまき)りょうとは、新人時代をともにした世代で、既に全国ツアーでも組んだ。

 「想像力が豊かで、常に新しいことを求め、挑戦を続けて、夢を追いかけてこられた龍さんの姿勢、思いは、自分が卒業する最後の日まで持ち続け(次世代へ)つなげていかないと。私自身、龍さんと舞台に立ちながら、わくわくしていました。その思いを」

 珠城とともに龍が残した財産を、そして新たな月組を、引っ張る使命も控えている。【村上久美子】

 ◆ロック・ミュージカル「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」(作・演出=大野拓史氏) 天下統一への夢を追った織田信長の生涯をロックでつづる。信長に夢を抱き、愛し、戦った群像も交えたミュージカル。愛希は正室・濃姫こと、帰蝶役。

 ◆シャイニング・ショー「Forever LOVE!!」(作・演出=藤井大介氏) 永遠に輝き続ける多様な「愛」を描く。

 ☆愛希(まなき)れいか 8月21日、福井県生まれ。09年に男役として入団し、月組配属。10年9月「ジプシー男爵」で龍の恋人役を演じ、初の女役。11年5月に娘役転向。同8月「アルジェの男」で新人公演初ヒロイン。12年4月、龍の相手役としてトップ娘役に。今春、次期トップ珠城りょうの相手娘役として全国ツアー。身長167センチ。愛称「ちゃぴ」。