宙組トップ朝夏(あさか)まなとが、組カラーの「紫ヘア」で劇団9代目トートに臨んでいる。日本初演から20年となる「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」に主演。歴代トートのトレードマークだった銀髪から離れ、新たな黄泉(よみ)の帝王を提示する。兵庫・宝塚大劇場は22日まで、東京宝塚劇場は9月9日~10月16日。

 足長でスタイリッシュな「まぁ様」が、濃紫ヘアで、目元をクールにキメたトートを作っている。

 「トートのテーマカラーであった銀髪を使わずに。私でもう(宝塚)9人目。色がかぶってしまう。オリジナリティーがなくなるので、宙組のテーマカラーである紫色を使いたかった」

 濃い紫に見える髪色は、実際には赤と青が重なった色合い。「それだけでは重くなるので、カーキの(毛)色をランダムに入れて、パッと振り返ったときに見えるように」。緻密な計算で、メークもシャープに「現代風」を意識する。

 「ポスター撮影をして、写真を見たら、人間じゃないみたい! と(笑い)」

 入団後の組配属から最初の本拠地作が、花組の春野寿美礼が主演した「エリザベート」(02年)だった。

 「当時は最下級生で、市民とかいろんな役。いつかはメインキャストで、と思っていたら! 先輩方のトートを(映像研究で)見ると、やはり皆さん個性が違う。中でも(日本初演の)一路真輝さんは、日本で最初のトートですから」

 日本初演は宝塚で、96年に一路真輝が主演した。今回が宝塚9回目の上演。演出には小池修一郎氏とともに、小柳奈穂子氏が入る。

 「ちょっと芯から外れてみようかなと考えています。そもそも、トートはエリザベートの内面から出たキャラクターなので」

 ウィーンの名作が生み出した死神、黄泉の帝王トートは、非運をたどるエリザベートの苦悩から生まれた。小柳氏からは、見方を考えるよう助言された。

 「小柳先生が『どうせ手に入るんだから、もっと遊んだらいい』と、独自の解釈をおっしゃって。エリザベートを追い詰めようと意識していたんですが、手のひらで転がすような遊びの部分もありだなと」

 けいこに先立ち、ウィーンも訪ねた。「行く先々で、エリザベートとフランツの情報はあるのに、トートは何もないので、寂しい状況だったんですけど」と笑う。トート“生みの親”にもなるエリザベートの心情を探ろうと、博物館など各所を回った。

 「結婚式を挙げた教会とか。空気がすごくヒヤッとしていて、日本ではない空気感。冷たい冷気が漂っている。ここなら、トートがいるなって感じました。あの空気感を大事に、思い出してけいこをしています。行ってよかったです」

 肌身に刺さった感覚を研ぎ澄まし、9代目トートを仕上げている朝夏。トップ就任から本拠地3作目となり、宙組メンバーも「みんなの士気が高い。頼もしい」。熱いけいこ場に、組の充実、手応えも感じている。【村上久美子】

 ◆エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-(潤色・演出=小池修一郎氏、演出=小柳奈穂子氏) ウィーン発ミュージカル「エリザベート」をもとに、黄泉(よみ)の帝王トートを主役に置き、宝塚版として96年に一路真輝主演で日本初演。独創的なストーリーを美しい旋律の楽曲でつづる宝塚代表作のひとつ。宝塚9回目の上演で、朝夏が9代目トート、エリザベートは実咲凜音で8人目。フランツは真風涼帆、ルドルフは澄輝さやと、蒼羽りく、桜木みなとの役がわり。

 ☆朝夏(あさか)まなと 9月15日、佐賀市生まれ。02年に初舞台。花組配属。05年「マラケシュ・紅の墓標」で新人公演初主演。10年「BUND/NEON 上海」でバウ単独初主演。12年6月宙組。昨年2月トップ就任、同6月「王家に捧ぐ歌」で本拠地お披露目。今年は正月公演「Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~」主演。身長172センチ。愛称「まぁ」「まなと」。