星組新トップ紅(くれない)ゆずるの本拠地お披露目作が兵庫・宝塚大劇場で上演中だ。新人公演最後のチャンスで初主演した「スカーレット・ピンパーネル」。18世紀末のフランス、革命政府から貴族を逃す英国貴族を演じている。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップのような“ひと癖”を加え、謎めいたキャラクターに仕上げる。兵庫・宝塚大劇場は4月17日まで、東京宝塚劇場は5月5日~6月11日。

 新人公演から9年。トップ本拠地お披露目が、新人初主演した思い出の「スカピン」。フランス革命後、弾圧される貴族を逃す英貴族のパーシー役だ。

 「パーシー(主人公)は、正義感ももちろんある。でも、それだけで突き動かされたのではおもしろくない。時間とお金があるがゆえの腕試し的な面もあったのでは。その遊びが余裕につながり、たまに見せるニヒルな面もあり、何考えてんだろっていうような」

 トップに立った自身の余裕ともリンクする。

 「イメージとしては『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップのような、ひと癖あるなっていう感じがエッセンスとして入ったらいいな、と」

 今作は星組で08年に日本初演。当時トップの安蘭けいが主演した。「(演出の)小池(修一郎)先生も、安蘭さんも大切になさっている作品。汚してはならぬという思いが強い」。初代パーシーの安蘭は昨年、外部公演で、ヒロインのマルグリットを演じた。パーシーは石丸幹二だった。

 「石丸さんと3人で『パーシー!』と言いながら遊び、話しました」。時の流れを実感。ただし、けいこに入ると、小池氏の厳しい指導に変わりはなかった。

 「初演時は、一言のセリフが言えなくて、2時間ぐらい怒られたことも。ほっとんど! 毎日! 何度も『外すよ』と言われた。少しでも成長したと思っていただけたら。今も怒られているんですけど(笑い)」

 叱責(しっせき)の中に愛情、妥協を許さぬ姿勢を感じる。今回、怒られたのは、相手娘役に迎えた綺咲愛里(きさき・あいり)とのハーモニーが引きがね。

 「綺咲の地声が低く、私が高い。『声逆にしなさいよ! 気持ち悪いんだよ! それぐらい計算しろ』と、私が怒られまして。上級生になると、怒られなくなりますが、先生はバシッとカツを入れてくださる」

 紅は、けいこ場での失敗は恐れず、攻める姿勢を貫いてきた。

 「星組ってうるさくて、1人1人の個性が強い。休憩時間はすっごくおもしろいのに、芝居になるとヒューンてなる。周囲を気にして引いてばかりだと、おもしろさが出ない。やってみて『うるさい』と言われたら、やめたらいい。注意されることを恐れるな。怒られたら『1ポイント』ぐらいに思うとけ! と」

 大阪で生まれ育った新トップは言う。「とにかく、やって(し)まえ! で、思いっきり怒られてきた」。トップになっても変わるつもりはない。相手役である兵庫出身の綺咲にも同様につっこみを求める。

 「厳しい指導に負けて(萎縮して)ほしくない。『絶対に引いたらあかん』『やってまえ』『やれ!』と。前のめりで(話を)聞けと言っています」。関西出身の“新トップコンビ”は、前のめりで星組をけん引していく。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット・ピンパーネル)」(潤色・演出=小池修一郎氏)97年にブロードウェーで初演され、日本では08年、安蘭けい主演の星組公演が初演。フランク・ワイルドホーンの名曲をもとに、宝塚版では冒険活劇、すれ違う夫婦の心理描写を濃く描写し、10年に月組で再演。

 物語は18世紀末のフランスが舞台。フランス革命後、革命政府は、貴族たちを次々に断頭台へ送りこんだ。恐怖政治に反感を抱く英貴族パーシー(紅)は、「スカーレット・ピンパーネル」と名乗り、貴族たちを国外逃亡させる活動を行っていた。相手娘役の綺咲は、妻で人気女優のマルグリット。パーシーと対立するショーヴラン役は礼真琴。

 ☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年初舞台。08年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。11年「メイちゃんの執事」でバウ初主演。14年「風と共に去りぬ」で全国ツアー初主演。昨年11月に前トップ北翔海莉の後任として、相手娘役に綺咲愛里を迎え星組トップ。今年1月、インド映画をもとにした「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻」でトップ初主演。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。