来年秋の台湾公演主演が決まっている星組トップ、紅(くれない)ゆずるは、今作ミュージカル「ベルリン、わが愛」で、戦争の影と戦うドイツの映画マンにふんし、久々のスーツ物で「大人の男性」を見せたいという。ショー「ブーケ・ド・タカラヅカ」では、宝塚レビューの王道作で「清く正しくセクシーに」をテーマにする。兵庫・宝塚大劇場で29日~11月6日、東京宝塚劇場で11月24日~12月24日。

 小顔でスリム。久々のスーツ物も、積み上げた男役経験で見事に着こなす。

 「着こなし、たたずまい、レトロなかっこよさ、様式美…。厚みのある男性にしたい。セピア系が似合い、芯が燃えている男です」

 今作はオリジナル。ナチス台頭前のドイツ・ベルリンが舞台。主人公は戦争の影と闘いながらも、映画制作に情熱を傾ける。宣伝大臣ゲッベルスと映画人によるドラマを描いた三谷幸喜氏の名作「国民の映画」から、世界観を吸収した。下級生から役柄との共通点を指摘された。

 「『すごく、こだわりがあるところが似ていますね』と。こう見せたい-というところは、何が何でも! と(演出の)先生に食らいつきます。稽古中も、違うと思ったら止める。すっと流れていくのが嫌なんです」

 子どものころから凝り性だった。「やるならとことんやれ、でした」と言う。最も凝った対象には「宝塚」と即答。あこがれた学生時代を振り返って言う。

 「高校の授業中、頭の中で、宝塚までの駅の名前を全部言ってみたり。スルッといくと、結構近い、すぐそこやん! と(身近に)思いたいというか…。逆に、宝塚から帰る駅にいる自分をイメージして、こうやって毎日、通う日がくるんだろうか、とか」

 そんな紅にとって、宝塚レビュー90周年記念を兼ねたショーは夢のようだ。

 「酒井澄夫先生の王道レビューです。先生が昔の星組公演のプログラム、くださったんです。博物館に飾ってあるみたいなものがどんどん出てくるんですよ」

 少年のように目を輝かせる。酒井氏が手がける作品は派手な動きがない分、メンバーの放つ「個性」が肝になる。稽古場では酒井氏からは「色気」「華」との声が連日、響く。

 「酒井先生はいつも『清く正しくセクシーに』とおっしゃる。先輩方の映像を見ると、1人で大きな(舞台の)空間を埋めてらっしゃる。余分な動きがない」

 大先輩、鳳蘭の代表作のひとつで酒井氏が手がけた名曲「セ・マニフィーク」も織り込まれる。「それぞれが『自分の色』『個性』を持ってやらないと、成立しない」と考える。

 大阪出身。つっこみも返しも得意。自らの個性を「突然、爆発したような明るさと、ひるまない感じ」と分析。組子には「個性がないなら作れ」と言い続ける。就任約1年。殻を破った後輩につっこまれることも増えた。「最近、いじってくれて、ありがたい」。星組全体の個性も築かれつつある。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ベルリン、わが愛」(作・演出=原田諒氏) 1920~30年代にかけてハリウッドと並ぶ映画の都として栄えたドイツ・ベルリンに、ナチスが暗い影を落とし始める。その最中、ミュージカル映画こそが新たな娯楽作と信じ、推進する「映画人」たちを描くオリジナル。

 ◆タカラヅカレビュー90周年「Bouquet de TAKARAZUKA(ブーケ・ド・タカラヅカ)」(作・演出=酒井澄夫氏) 90周年を迎えたタカラヅカレビューの伝統を紡ぐ王道レビュー。

 ☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年初舞台。08年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。14年「風と共に去りぬ」で全国ツアー初主演。昨年11月に星組トップ。今年1月、インド映画が原作の「オーム・シャンティ・オーム」でトップ初主演。その後「-ピンパーネル」で本拠地お披露目。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。