急性骨髄性白血病で死去した歌手本田美奈子.さん(享年38)を偲ぶチャリティーコンサートが先ごろ、今年も開催された。没後10年。早見優、松本伊代ら同世代の歌手が中心となって命日の11月に続けてきたステージは、今年も超満員の熱気だった。アイドル歌謡、演歌、ミュージカルなどさまざまな音楽で盛り上がる光景は全盛期の「ザ・ベストテン」のようなカラフルさ。イベントが長続きしている理由のひとつかもしれない。

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 美奈子さんの追悼と、白血病支援活動へのチャリティーを目的にした「LIVE FOR LIFE音楽彩」は今年で8回目。一周忌から始まった追悼会の時代を含めると11回目になる。主催者代表の作曲家服部克久氏が「年々お客さんが増えている」と驚く通り、会場の日本橋三井ホール(客席数690)は超満員。この手の追悼イベントは、年月とともに規模が小さくなったり、自然消滅することも多い。毎年同じ会場を維持し、動員数も熱気も右肩上がりなのはすごいことだ。

 理由はいくつかあると思うが、ポイントは「楽しさ」だと思う。三回忌あたりまでは涙に包まれがちな「式典」という雰囲気だったけれど、ここ数年は音楽の楽しさを全面に押し出した歌謡祭のようになっている。歌と笑顔が大好きだった美奈子さんにはぴったりで、歌手本田美奈子のDNAが、最もハッピーな形で継承されている印象だ。

 早見優(49)が「夏色のナンシー」を歌い、松本伊代(50)が「センチメンタル・ジャーニー」を歌う流れはお約束で、伊代ちゃんの親衛隊も毎年おそろいのハッピを着てやってくる。美奈子さんのヒット曲の数々は、レギュラー出演者やゲストが披露。一昨年はAKB48高橋みなみが秋元康氏作詞の「1986年のマリリン」を歌い、今年の「Oneway Generation」は、優ちゃん、伊代ちゃん、森口博子ちゃん(47)が3人で盛り上げた。着物でキメて演歌を歌う坂本冬美(48)のかっこよさも毎年の目玉のひとつ。アイドルも演歌も同じスタジオで歌う「ザ・ベストテン」のようなカラフルさがあって、80年代音楽に親しんだ世代にはお得感漂うライブ空間になっている。

 今年は伊代ちゃんの夫、ヒロミ(50)も来た。伊代ちゃんが歌う「センチメンタル・ジャーニー」のラストで、同じ振り付けを踊りながら出てきた。女ばかりの中にクラスのお調子者男子が入ってきたような展開に、会場は大爆笑。伊代ちゃんと美奈子さんがかつて同じ所属事務所で、ヒロミにとって美奈子さんは妹のような存在だったという。「僕が入院していた時、美奈子がお見舞いに来てくれた。もしかしたら美奈子と結婚していたかもしれない」と、やはり陽気に盛り上げた。

 美奈子さんのフィールドのひとつだったミュージカル、クラシックの聴き応えも、「音楽彩」の魅力のひとつだ。その道の第一人者たちが「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など人気ミュージカルの名曲の数々を披露。迫力の歌声に客席も大いに沸く。今年は美奈子さんの“新曲”もお披露目された。病床で、恩師岩谷時子さんのために歌ったアカペラ音源に平原誠之さんがピアノ伴奏をつけた新作アルバム「AGAIN」の中から、「Amazing Grace」「impression」の2曲。苦しい抗がん剤治療の中でも発声練習を欠かさなかった美奈子さんの歌声は透き通るような美しさと力強さ。アイドル時代の映像コンサートと合わせ、今も美奈子さんがそこで歌っているような臨場感があった。

 これだけのステージを、「友情だけで出演しているアーティスト」(服部氏)たちが火を消さずに10年続けてきた。本気でなければできないことで、それだけの魅力を美奈子さんは仲間に残した。「心の中の大きな存在」(早見)、「年を重ねるごとに思いが大きくなる」(坂本)、「忘れたことがない。思い出すことが多くなった」(松本)。私も当時の担当記者として美奈子さんからすてきな思い出をたくさんもらった1人なので、早見さんたちの感覚も分かる気がする。

 美奈子さんとは同い年。本当なら私と同じ48歳になっている彼女が、大好きな歌の世界でどんなチャレンジをしているのか見てみたかったけれど、スクリーンに映る38歳のままの彼女は本当にチャーミングで、当時と変わらないハッピーを会場にくれる。デビュー30周年をファンと歌手仲間に祝ってもらっている彼女を見て、懐かしい人柄と、彼女の歌の力をあらためて感じている。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)