民放10月改編が出そろった。日本テレビの牙城である日曜夜の切り崩しに全局が本腰を入れ、3つの新番組と1つのリニューアルが「ザ!鉄腕!DASH!!」に挑む異例の展開になっている。「テレビ人生をかけて日曜を戦う」と宣言する局もあり、今回の挑戦は気合が違う雰囲気だ。

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 「鉄腕DASH」「世界の果てまでイッテQ」「行列のできる法律相談所」という視聴率15%超え番組の3階建てになっている日テレ日曜の攻略は、他局にとって長い宿題状態。この時間帯のどこかに新番組を編成しては返り討ちにあうパターンの繰り返しになっていた。今回の改編では、「鉄腕DASH」の19時台に全局の新番組とリニューアルがそろう大激戦。まず3階建てのトップバッターである「DASH」を切り崩し、それぞれが日曜強化の足がかりにしたい意向だ。

 日曜19時台にそろった各局の10月新番組は次の通り。

◆TBS「クイズ☆スター名鑑」MC/ロンドンブーツ1号2号田村淳、枡田絵理奈

◆テレビ朝日「日曜もアメトーーク!」MC/雨上がり決死隊

◆フジテレビ「フルタチさん」MC/古舘伊知郎

◆テレビ東京は「モヤモヤさまぁ~ず2」をリニューアル

 各局の改編発表会の中でも、打倒日テレに最も鼻息が荒かったのがフジテレビだ。

 5%あたりの低視聴率で推移していた2時間枠「日曜ファミリア」を1年で畳み、12年ぶりにバラエティー畑に帰ってきたフリーアナウンサー古舘伊知郎の2時間番組「フルタチさん」をスタートさせる。宮道治朗編成部長は「日曜夜は『サザエさん』から『フルタチさん』への流れ。私のテレビ人生をかけて日曜を戦う」と自信をみなぎらせている。

 フジと古舘はもともと「夜のヒットスタジオ」やF1実況などで関係性が強く、宮道氏は「本来のバラエティーの古舘さんとどうしても組ませていただきたかった。おしゃべりモンスターの古舘さんに、2時間枠でフルスイングしていただく」。世の中の“引っかかる”ことをテーマに「他局がやらないような」企画を展開するという。

 テレ朝は、「ファミリー層、老若男女に楽しんでもらえる日曜」を目指しての編成。木曜23時台の人気番組「アメトーク」を日曜19時台にも編成し、週2回の放送とする試みだ。説明会でも、質問がほぼこの挑戦に集中した。

 今年2月にスペシャル版として「日曜アメトーク」を放送しており、12・2%の高視聴率を受けてのゴールデン進出となった(ちなみに同日の「鉄腕DASH」は17・1%)。西新総合編成局長は「19時台でもアメトークを支持していただけるんだと感じた」。本社屋上で行った夏祭りイベントで、アメトークコーナーが子供に人気だったことにも背中を押されたという。19時台向けの具体的な内容は「放送ギリギリまで詰めたい」。

 打倒日テレの意識については「我々は自分たちにできることを念頭に頑張るだけ」と淡々としている。フタを開ければ3局の日曜19時が新番組だったことに「一斉にドンと出たらこうなっていたので」と驚きながらも「各局がしのぎを削って幅広い層の視聴者に選んでいただくのは、テレビ界全体にとっていいこと。ウチとしてはぜひアメトークを応援してほしいが」と話す。

 TBSは、4年ぶりにロンブー淳の「クイズ☆タレント名鑑」を復活させ「クイズ☆スター名鑑」として勝負を挑む。タレント名鑑に載っている芸能人を勝手にクイズネタにする、自称「下世話」スタイルで異彩を放ち、一部に熱烈に惜しまれて終了した経緯がある。同じ制作チームが「過去の成功と失敗を教訓に」パワーアップ。人気クイズの復活はもちろん、新クイズも登場するという。

 「鉄腕DASH」と視聴者層がかぶりそうもない一手は、放送担当記者たちも「うまいかも」「いや大丈夫か」とざわざわ。石丸彰彦編成部企画総括は「ゲスな番組を目指しているのではなく、あくまでもファミリー層に楽しんでいただける番組を目指す」と念を押す。過去の実績と、十分なマーケティングによる自信の編成としている。「打倒日テレということではなく、我々は視聴者の方に楽しんでいただける番組を地に足付けて精いっぱい作るだけ」と語る。

 テレ東は、深夜時代を含め10周年に突入した「モヤさま」をリニューアル。3年半にわたりアシスタントを務めた狩野恵里アナの報道転身により、10月から3代目アシスタントを迎えてパワーアップする。局アナかどうかも含め、人選は検討中という。

 六本木への本社移転で盛り上がる同局は、大型番組がめじろ押しの祝賀ムードで、外野から見ても元気。高野学編成部長は「他局さんの日曜が非常に強くなってくることは危惧しておりますが、『モヤさま』は放送枠を変えずに挑みます。勝負してみないと分からないが、誰がアシスタントになるのかという手前みそな話題性でテコ入れし、リニューアルで対抗していきたい」。

 迎え撃つ日テレは、2年前から一貫したスローガン「習慣日テレ」を継続。企画力で既存の人気番組をブラッシュアップし、盤石化を推し進める従来の戦略に自信を見せている。福士睦編成部長は「積み上げたブランドイメージを大切にしながら、日々の努力でリブランディングしていく日々の努力が視聴率向上につながる。そういう意味では、毎週改編している気持ちで頑張っている」と構えている。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)