昨年から放送20周年に突入しているNHK Eテレ人形劇「新・ざわざわ森のがんこちゃん」(金曜午前9時)が大飛躍中だ。姉妹番組「えいごでがんこちゃん」に加え、先月からアニメ「がん がん がんこちゃん」もスタート。情報生番組では“インタビュアー”も務めた。20年愛されるがんこちゃんの魅力を、古田尚麿チーフプロデューサーに聞いた。

**********

NHK Eテレ「新・ざわざわ森のがんこちゃん」
NHK Eテレ「新・ざわざわ森のがんこちゃん」

 -がんこちゃんの快進撃すごいですね。いつの間にかNHKを代表するキャラクターになっていて。

 古田 20年続いたからこその広がりだと思います。道徳番組として学校現場で長く支持され、視聴者の皆さまに親しんでいただいたおかげ。「おかあさんといっしょ」のキャラクターも4、5年で変わりますから、20年このビジュアルで変わっていないがんこちゃんはかなりインパクトがありますよね(笑い)。

 -恐竜キャラというのも異色です。

 古田 クマや犬などのメジャーな動物ではなく、個性の違いを出したかったというねらいがあります。ヘビ、カエル、カタツムリなど「みんな違ってみんないい」という思い。バブル崩壊後の96年という時代に、明るくて力持ちでまっすぐなキャラクターというのも良かったのだと思います。かわいいけど、美少女ではない(笑い)。体格もどっしりしていて、失敗したらちゃんと「ごめんね」が言える子。いわゆる優等生ではないから共感しやすいんですよね。

 -ざわざわ森は、人類が滅亡した後の世界という設定もすごいですよね。

 古田 よく考えると恐ろしい(笑い)。人間がいなくなった謎に初めて迫る「エピソード0」を、20周年記念に大みそかに放送したら大きな反響をいただきました。がんこちゃんを見て育った20歳~30歳の大人に向けた特別編で、「怖かった」というご意見も多かったです(笑い)。

 -ネット上も「切ない」「ハードSF」「こんな重い話を年末にやるNHKがCOOL」と大反響でした。「猿の惑星」を思わせる深い世界観で、がんこちゃん、何でもアリだなと(笑い)。

 古田 スタート当初からがんこちゃんをガチガチな設定にしていないんですよね。ざわざわ森もゆるく定義していて、想像の余地を残している。だからどこへ行っても違和感がないし、がんこちゃん自身も自分の設定が分かっていない。「会って話せばおともだち」だし、興味があれば「それなあに」と聞くし、おいしそうなら食べてみる。素直だから、行動範囲が広がるのだと思います。

 -昨年末の「シブ5時」で、“ひふみん”こと将棋の加藤一二三9段(77)をインタビューしていたのも、そんな持ち味のなせるわざでしたよね。

 古田 「インタビューして」と言われて「やってみる!」という素直な流れですよね。「加藤一二三さんが来るけどがんこちゃん来ない?」と。2人が似ているといううわさが以前からあり、一二三さんもがんこちゃんが大好きだといううれしいお話を受けて実現しました。

 -14歳の史上最年少棋士に負けてしまった加藤9段に「年下に負けて悔しくないの?」とまあまあ辛口ながんこちゃん(笑い)。加藤9段もチャーミングな笑顔で、なごむツーショットがネットやSNSで話題になりました。

 古田 番組スタート時に小学1年生だった人は今27歳。ネット世代らしい話題の広がり方ですよね。最近の回では、スマホが出てくる話もありました。人間の遺物として出てきて、なりすましなど、気をつけるべきところをお子さんたちにお伝えする内容。

NHK BSプレミアム「がん がん がんこちゃん」(C)NHK
NHK BSプレミアム「がん がん がんこちゃん」(C)NHK

 -逆に、アニメ「がん がん がんこちゃん」(BSプレミアム、月曜午後6時25分)は、電気もスマホもないざわざわ森に、2020年から人間の少年がやってくる話ですよね。落ちてきたタイムマシンをがんこちゃんが素手で受け止めていて爆笑でした。

 古田 人形劇の方は道徳の教材として「約束や決まりを守ろう」「物を大事にしよう」など学習指導要領に沿った内容で物語を作っていますが、アニメはまったくのドタバタコメディー。今どきの小学1年生の男の子が、電気もスマホもないざわざわ森で体験するカルチャーギャップや、モノがなくても楽しめることを楽しく見せていきたいですね。

 -「えいごでがんこちゃん」(Eテレ、金曜午前9時10分)では、英語にも進出中です。

 古田 英語といっても、出てくるのは単語くらい。伝えたいのは異文化コミュニケーションの大切さです。ペンギンの話す英語を、がんこちゃんも仲間たちも理解していませんが「それやりたいのね、じゃあ一緒に遊ぼうか」となる。言葉が通じなくても、いろんな国の人と仲良くなれたら楽しいよというテーマに、がんこちゃんはぴったり。

 -人形劇というアナログにも独特の魅力がありますよね。

 古田 画面から伝わる素材感の温かみは人形劇ならではですよね。人形自体も物体としてきちんと存在しているし、動かしているのも人間で、声も人間。世代を超えて楽しめる普遍的なエンターテインメントなのだと思います。がんこちゃんも、20年続けてきたら2世代に知ってもらえるキャラクターになっていた。いつか3世代に広がったらうれしいですね。

【梅田恵子】(梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)