終わる終わると言われながら、フジテレビ系昼番組「バイキング」(月~金曜午前11時55分)がこの4月で放送丸3年を迎えた。視聴率1%台の絶望的な時期を経て、今や平均4%台後半という“4倍増”。今年1月には番組最高の7・2%を記録し、王者「ひるおび!」(TBS)と同率1位の瞬間風速も。昨年、時事ネタの生討論にかじを切ったリニューアルが実を結んでいる形だ。「あからさまに数字は取りに行く」という番組の顔、坂上忍(49)に聞いた。

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フジテレビ系「バイキング」MCの坂上忍
フジテレビ系「バイキング」MCの坂上忍

 -「生討論」を打ち出して以降、視聴率も見違えてきました。昼からバトル上等なオリジナリティーが面白げで。

 坂上 街を歩いていても「見てる」と言われる回数が増えましたし、よその番組のスタッフさんから面白いと言っていただける機会も増えてありがたいです。

 -月曜MC時代が1年、全曜日のバイキングMCになって2年。丸3年の実感はいかがですか。

 坂上 あっという間ですけど、経緯を考えると長さを感じますよね。最初は「いいとも!」の後という逆風感もありましたし。僕だけ俳優業からやってきたよそ者だったので、月曜MCだった最初の1年はスタッフさんと「終わることを前提に、月曜班にしかできないことをやろう」と。地引き網とか(笑い)、頭のおかしい企画をいろいろやって数字をとりに行って、楽しかったですけどね。

 -全曜日の出演を依頼された時は驚いたんじゃないですか。

 坂上 衝撃でしたね。「へ!?」って。できるできないは後の話で、月曜班としてはうれしかったですよ当然。でも、月曜班が頭のおかしいことができたのは、ほかの皆さんの安心の4曜日があったから。1日くらい踏み外してもいいでしょうという無責任さを出せたわけで。

 -全曜日のMCになった後も、視聴率1・6%みたいな時もあって。打ち切り説も茶飯事でしたが、当時の心境は。

 坂上 一番キツかったのは、「バイキング」は曜日ごとにルールも流儀も違う5つの番組だったと気付いた時。各曜日のキャストさん、スタッフさんとどう対応していけばいいのかと。あと、こんなにしゃべれる方々がいるのに、生かせていない番組作りになっているのもつらかった。

 -「ヒルナンデス!」と同じじゃん、みたいな内容の頃ですよね。

 坂上 4チャンネルさんみたいなグルメロケやってみたり、健康やってみたり。それもいいんですけど、僕の中に絶対的な好き嫌いがあるんですよ。いすに座ってVTR見ている生放送って何だろう、もっとしゃべらせてほしいという思いをずっと抱えていて。

 -番組責任者にどう伝えたのですか。

 坂上 おととしの9月くらいですかね、「1日でいいから、VTRとか要らないんで、しゃべり押しでやらせてもらえませんか」とお願いしたんです。どうせ終わるなら試すべきこと全部試したいじゃないですか。金曜日で政治を扱ったんですけど、その結果がたまたま良くて。ぽつぽつ回数を増やして微妙に結果が出始め、1年前から今の形にしてくださった。

 -しゃべりで押す番組への変化に戸惑う出演者もいたのでは。

 坂上 あえて聞かないようにしています。喜んだ人もいれば「急に?」みたいな人もいたかもしれない。

 -曜日MCの方たち(ブラックマヨネーズ、柳原可奈子、高橋真麻、おぎやはぎ、フットボールアワー、雨上がり決死隊)とは、最初からうまく連携できたのですか。

 坂上 最初からスポッとはまったのはブラマヨ。僕の抜けた月曜に後から来たので。驚いたのは、いちばんキャリアがあって面倒臭そうだと思っていた雨さんがいちばんラクだったこと(笑い)。ホトちゃん同い年だし、宮迫君もものすごく柔軟で。特に雨さんの金曜日は政治がメイン。先頭切って持論を話してくれたのが宮迫君だったんですよ。そのひと言を聞いた時にすごくホッとして。

フジテレビ系「バイキング」MCの坂上忍
フジテレビ系「バイキング」MCの坂上忍

 -石破茂さん、小沢一郎さんなどの大物政治家が出演した時は、画面が「これバイキング?」という迫力で(笑い)。

 坂上 一番初めは都知事選の3候補をスタッフさんが引っ張ってきてくれて。米大統領選もずっと中継してましたからね。僕、中継なんかしたことないのに、アメリカと三元中継とか(笑い)。

 -どう考えてもASKAさんが番組見ながらブログで応えているようなライブ感も話題になりました。

 坂上 なんで?と驚きましたけど、番組を見てくださったからこその盛り上がりだなあと。

 -そういう内容や、坂上さんたちの言動がじゃんじゃんネットニュースにのぼって番組名が人の目にとまるようになったのも、視聴率的には大きいですよね。話題性と引き換えに批判も受けるわけで、気持ちにどう折り合いをつけているのですか。

 坂上 どの番組にも表現の枠がありますが、役者さんも芸人さんも、枠ギリギリまで使う人が減っている。もうちょっと柵は向こうまであるから、行っていいんじゃないの、という感覚です。僕なんか、やりたい芝居のMAXを監督に見せて、頭たたかれてさじ加減を知るという商売でやってきたので。もともと柵があると隙間から頭出したり、飛び越えたがる癖(へき)もあるので(笑い)。

 -一方で、トークバトルをやるには今のテレビは息苦しくないですか。

 坂上 昔からこの世界でやっているのでそれは一番感じてますけど、そこでメシ食わしてもらっている以上、テレビの責任にしてもしょうがない。僕は面白いものだと思っているし。

 -先月末も6・6%という高視聴率がありましたが、視聴率は気にしますか。

 坂上 気にしてます、当然。数字がとれなくてもアイデアを試していく勇気を含め、基本はあからさまに数字をとりに行きます。

 -いいですね。「数字なんか気にしない」という送り手は個人的に好きになれないので。情熱を傾けて作ったものなら、多くの人に見てもらいたいと思うわけで。

 坂上 ええ。お客さん1人でも舞台に立つのは当然のこととして、それで納得せずに客を入れる努力をしろということ。

 -平均4%後半まで上がってきて感激では。

 坂上 まだダメです(きっぱり)。僕の勝手な今年の目標はスタッフさんには伝えてありますので。

 -差し支えなければどのくらいですか。

坂上 え?(笑い)

 -4%後半ではダメですか。

 坂上 ダメです。4後半なら次は5後半。だからまあ、6~8の間はいかないと。平均で。

 -え。8ですか。

 坂上 8は言いすぎましたね(笑い)。

 -それだと「ひるおび!」を完全に抜きますよね。

 坂上 よその番組のことは言いません(笑い)

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)