4月改編で一気に激戦区となっていた水曜10時に異変が起きている。先週、フジテレビ新番組「良かれと思って!」の視聴率が、TBSの人気番組「水曜日のダウンタウン」を抜いた。放送11回目でのスピード初勝利。低迷が続くフジテレビには久々に明るいトピックとなった。

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 6月28日放送分の視聴率は、「良かれと思って!」7・1%、「水曜日のダウンタウン」7・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。7%台の戦いだったとはいえ、勝利は勝利。「胸を張れる数字でもないが、まずは『水曜日のダウンタウン』の背中を捕まえるというのが番組スタート時の最初の目標だったので、今回の結果は今後への弾みになる」とうれしそうだ。

 「良かれ-」は、バカリズム、劇団ひとり、沢部佑、カズレーザーのMC4人がゲストに余計なお世話の人生アドバイスをするトークバラエティー。当初は梅沢富美男、かたせ梨乃、西村知美ら、1人のゲストに4人がかりで辛口接待を繰り広げるスタイルだったが、視聴率が4%台に落ち込み、6月から演出をマイナーチェンジした。「世間の声を伝えさせていただきます」をテーマに、ゲストに対する一般の意見をインターネットや50人の書き取りアンケートなどで集め、そこからトークを広げるスタイルにした。

 矢口真里に「性欲があざとい感じがする」(67歳女性)とか、言われた本人も大ウケする視聴者目線が若い女性層の支持を集め、6月7日の視聴率が7・2%に大幅アップ。8・8%だった「水曜日のダウンタウン」を射程圏内にとらえていた。次々と繰り出される“世間の声”で番組のテンポも上がり、MC4人も生き生きとしてきた印象だ。

 初勝利した先週の目玉ゲストは、「有村架純の姉」を武器にヌード写真集などの便乗商法に励むタレント有村藍里だった。「少しは妹さんのことを考えたらいかがでしょうか」「すぐに消えちゃうと思います」などの世間の声をゆるっと受け流し、「私はただの有村架純の姉。それ以外何もないんで」。笑顔で開き直った22時21分に、番組の瞬間最高視聴率9・2%をマークした。有村も矢口も、刺激的な発言がネットニュースに取り上げられ、ネットから番組の認知度が上がる流れは「バイキング」と似ている。

 視聴者投稿の「ノンストップ!」「スカッとジャパン」や、一般OLたちのツッコミワードが笑える「キスマイブサイク」など、素人センスを取り入れた番組は同局でも安定しており、「良かれ」も、視聴者目線にフォーカスすることで、よりおせっかい感が高まった印象。トシちゃん(田原俊彦)に「ポルシェは60歳になったら買うと言っていたのになんでもう買っちゃったの」「血尿が出たと言っていたのになぜ健康診断に行かないの」。ファンしか知らない爆笑エピソードがぞろぞろ出てきて、素人のツッコミ力に笑ってしまった。

 MCの4人は、もともと「水曜日のダウンタウン」のプレゼンターとして活躍していたメンバーでもある。彼らが抜けたせいではないだろうが、「水曜日」側は、プレゼンターの顔ぶれや、披露する「説」がパターン化してきたようにも見える。もともと視聴率の乱高下が激しい番組なので一概に元気がないとも言えないけれど、強かったM1視聴率(20歳~34歳男性)でも「良かれ」に並ばれているのは気になるところだ。

 ちなみに、6月28日の他局の視聴率は、NHK「クローズアップ現代+」5・6%、日本テレビ「ダイエット・ヴィレッジ」8・7%、テレビ朝日「報道ステーション」12・1%、テレビ東京「テレ東音楽祭」8・4%。

 「良かれ」の次回(7月12日)は番組初の2時間スペシャルで勝負に出るという。ゲストはNON STYLE アキラ100%、熊切あさ美、亀田興毅ら。TBSは別の特番なので来週の直接対決はないが、今後も水10バトルの行方に注目したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)