4月からフジテレビ「プライムニュース」の顔となるはずだった元NHK登坂淳一アナウンサー(46)が、週刊文春に報じられたセクハラ疑惑を受けて出演を辞退した。先週は各局の定例会見ウイークだったが、質問を受けた両局の表情は大きく違った。退職済みとあって余裕が感じられるNHKと、動揺がありありのフジという感じで、登坂ショックの明暗がくっきりと出た。

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 先に定例会見が行われたのはNHK。1月24日、木田幸紀放送総局長の会見だった。翌日に週刊文春が発売されるタイミングだったため、「NHK在籍時代の処分の有無と、事態をどの程度事実関係を把握していたか」について質問が出た。

 木田氏は「残念ながら話せることはありません。すでに退職されている方ですので、僕の方からはコメントできない」。淡々と口調は穏やか。取材各社も、NHKが退職者についてあれこれ語れないことは承知の上であり、終了後、「デリケートな案件がよそに行ってくれてホッとしているはず」「話す顔がどう見てもご機嫌」などの感想が聞かれた。

 1日には上田良一会長の定例会見が行われたが、やはり同じコメント。在職中の適性や処分について重ねて質問を受けたが、「恐縮ですがご理解願えれば」と添える表情には余裕がうかがえた。

 一方のフジは対照的だった。26日に定例会見が行われたが、前日に「登坂アナ側から出演辞退があった」と、一斉発表したばかりという最悪のタイミング。開始時間を待つ記者たちの間を広報担当者が「質問しませんよね」と自虐的に回り、イレギュラーな光景に落ち着かないムードが漂った。

 質疑には主に報道担当の役員が答え、登坂アナの降板について「週刊誌の報道がきっかけとなったのは事実だが、最終的にはご本人からの辞退があったため、残念ですが受け入れた」。同局は2年前にも「ユアタイム」のキャスターに決まっていたショーンK氏が週刊誌に経歴詐称を報じられ、スタート直前に降板したばかり。繰り返されるドタバタ劇について「情報収集が不十分なのでは」と質問を受けると、「返す言葉もない」「率直に批判を受けたい」とした。

 一方、「登坂アナからの出演辞退がなければそのまま起用していたのか」との質問が出ると、今度は「仮定の質問にはお答えできない」「文春の記事とご本人の辞退の意向との関係は、我々は承知しておりませんっ」とキレ気味。極めてポビュラーな質問にピリピリする様子に事の重大さがうかがえて、会見終了後、別の役員が質問者をフォローする場面もみられた。

 宮内正喜社長は「このような結果になり、大変残念に思っている」。会見の冒頭では「4月改編は結果を出さなければならない勝負のタイミング」と年頭所感を述べたばかりだけに、改編の目玉がいきなりつまずいてつらそうだった。

 後任は現在検討中という。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)