平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)が重なった今年の冬ドラマ。大会期間中、多くの作品が視聴率4~6%台に落ち込んだ中、強さを見せていたのがTBSだ。日曜劇場「99.9~刑事専門弁護士2~」は視聴率17%で1位を快走。金曜ドラマ「アンナチュラル」も10%前後で踏ん張り、タイムシフト視聴率(録画視聴)でもずば抜けた人気を示した。「逃げ恥」以降顕著になった“ドラマのTBS”復活の背景には、16年に行った「企画重視」への方針転換があるようだ。

**********

 五輪期間中の「99.9」の放送は2回。2月11日は17・0%、25日はNHKの閉会式(19・5%)の裏で17・0%を記録した。

 「アンナチュラル」の放送は3回。9日は、NHKの開会式(28・5%)の裏で9・0%と健闘し、16日は10.1%と2ケタに復帰。23日はNHKのカーリング女子準決勝「日本対韓国」(25・7%)の裏で9・3%につけ、8話までの平均は2ケタを維持している。録画で見るタイムシフト視聴率が高いのも特徴で、23日は13・7%。リアルタイム視聴率との総合視聴率は21・1%を記録している。

 編成局企画総括の石丸彰彦氏は、最近のドラマ枠の好調について「いい評価を実感しています」。好調のポイントとして、16年から打ち出した「企画重視」「企画先行」の制作姿勢を挙げている。「常に企画から考える。この企画をやりたいからぜひこの人で、とオファーする方針が良い結果につながっていると思う」と話す。

 出演者を押さえてから企画を考えるキャスティング重視の時代もあったというが、「そのやり方だと企画が足りなくなる。1年で12本、2年で24本、3年で36本のドラマを作ることを考えると、常にいい企画を複数持ち、選び抜ける状態でないと。一番いい企画を一番いい役者さんにお願いすることで、見ごたえのあるドラマを作りたいという信念です」。

 振り返ると、15年に月曜8時と木曜9時のドラマ枠を廃止し、それまで5つあったドラマ枠を3つに減らした改革は大きい。当時は「低迷TBSがついに看板のドラマも縮小」と伝えられたりもしたが、伊佐野英樹編成局長は「5枠もあったら、埋めるのに精いっぱいで、作り手も出演者も回らない。3枠にしたことで現場に余裕ができ、企画をきちんと精査できるようになった」。もともとプロデューサー主義で作品を作ってきた同局にとって、企画重視はDNA。原点に戻ったともいえる。

 火曜ドラマは女性主役もの、金曜ドラマはエッジのきいた話題性のあるもの、日曜劇場は王道の人間ドラマ。枠のカラーが明確になったことで、さらに内外から企画が集まりやすくなったという。今では3枠をめぐって月に5本ペースの企画案が精査されているとし、「放送の1年前には全枠の企画が決まっているのがルール」(石丸氏)という状態を実現している。

 企画先行の結果、俳優の新しい魅力が引き出されるケースも増えたように思う。得意分野やパブリックイメージとは違う世界観に取り組む機会を得て、「こんな演技もできるのか」と新たな評価を得ていたりする。「逃げ恥」の新垣結衣、星野源、石田ゆり子などは文字通りの新境地だったし、「私、結婚できないんじゃなくて、しないんです」の中谷美紀と藤木直人のぶっ飛んだ毒舌バトルも新鮮だった。「リバース」で物静かな高校教師を演じた玉森裕太とか、清純派の吉岡里帆が「カルテット」で見せたヤバいヒールっぷりとか。「アンナチュラル」では、普通の人の強さを表現する石原さとみの演技力が注目の的だ。

 昨年はゴールデン帯(午後7時~11時)で10年ぶりに民放2位に浮上したTBS。ドラマは局の勢いとステーションイメージに直結するコンテンツだけに鼻息も荒い。4月期は、火曜ドラマ「花のち晴れ~花男Next Seazon」(主演杉咲花)、金曜ドラマ「あなたには帰る家がある」(主演中谷美紀)、日曜劇場「ブラックペアン」(主演二宮和也)のラインアップという。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)