フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(月曜午後9時)が9日にスタートする。低迷する月9が、ヒットメーカーの脚本家古沢良太氏と主演長沢まさみのタッグで視聴率浮上を目指す勝負作だ。「リーガル・ハイ」「デート~恋とはどんなものかしら~」など、ハズレなしといわれる創作手腕で月9と向き合う古沢氏に、発想法や、視聴率について聞いた。

**********

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏
フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏

 -古沢さんが月9を担当するのは「デート」(主演・杏)以来3年ぶり。月9は視聴率的に苦戦が続いていますが、悩める枠を任されてプレッシャーはないですか。

 古沢 なんにもないです(笑い)。枠とか関係なく書き始めていて、途中で「枠は決まったんですか」と聞いたら「この内容でできる予算は月9しかない」と言われたので。ほとんどの作り手はそこ(視聴率)にはいないんじゃないかという気がします。メディアや一般の人が視聴率を話題にしているのを見ると、正直遅れているなと思っちゃいますけど。

 -とはいえ、月9は調子悪すぎませんか。「民衆の敵」も「海月姫」も4%台を出し、商業放送としてはさみしいような。

 古沢 ヒットしないとすごい話題になる、不思議な枠ですよ(笑い)。先日、知人に「最近ドラマ見てる?」と聞いたら「忙しくて全然見てない。『海月姫』もまだ見てない」って。「海月姫」というタイトルは知ってるんですよ。月9でやっていることも。ほかの枠だと、ヒットしない作品はタイトルも知らないのが普通。あれこれ言われるほど注目度が高いというのは、いいことなんじゃないですかね。

 -たくさんの人に見てもらえて視聴率が上がればなおいいと思うのですが。

 古沢 テレビのビジネスモデルはいまだに視聴率であるので、テレビをやる以上はそこで戦わないといけないとも思う。反感買う言い方かもしれませんが、デビューして数年で脚本の名だたる賞みたいなものをもらっちゃったんで、そっちの方は感覚的に難しくない。僕にとっては、社会現象みたいな爆発的な数字をとることがまだ未知なので、仕事としては目指したい。狙ってできるものでもないですが、狙わないとできるものでもないので。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(C)フジテレビ
フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(C)フジテレビ

 -「コンフィデンスマンJP」は、月9初のコンゲームが題材。詐欺師を主人公に、だまし合いでストーリーが二転三転する人気のジャンルです。

 古沢 コンゲームはいつかはやりたいと思っていたんです。「スティング」はもちろん「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」とかもともと好きで。世の中がモラルや倫理に厳しすぎるんじゃないかと思っていたので、主人公のダー子(長沢まさみ)を作る時は、常識やモラル、法律にまったく関係なく生きている人を書きたいと思って。どうすれば愛すべき詐欺師になるかというのは苦労したところ。

 -詐欺の取材はどのように。

 古沢 荒唐無稽なので手口は非現実的でもいいやと。それより、スポーツ、古代遺跡、美容など、その業界で有名で金をもうけている人を調べました。そういう人って目立ちたがり屋で講演とかしていて、だいたいユーチューブに流れてる(笑い)。うさん臭い考古学者が荒唐無稽な説を一生懸命論じてるやつとか、今でも僕のユーチューブはそういうのが勝手にレコメンドされて上がってきます(笑い)。偽物を追求していくと、じゃあ本物って何なのかというのがテーマになることが多かったです。

 -何を書いても「不謹慎だ」と言われてしまう時代ですが、古沢さんのせりふは、痛快で刺激的なのにあまりやいやい言われませんよね。

 古沢 過激なせりふを言っているようでも、それを言っているこの人が面白い、と解釈してもらえているんじゃないかと。こいつしょうがないやつだな、ひどいこと言うやつだなと(笑い)。僕にとってのいいせりふって、普通のせりふなんだけど、この人がこの状況で言うから面白い、というもの。何を言うかは割とどうでもよくて、それを言っているこの人を面白くしたいんですよね。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏
フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏

 -一方で、しっとりしたいい話もお書きになる。「相棒」の靴職人の話とか、大好きなんですよ。

 古沢 僕も好きですね、われながら。

 -ああいうハートウオーミングなテイストは古沢さんのどういう部分から生まれてくるんですか。

 古沢 自分の精神状態がおかしいのかもしれないんですけど(笑い)、街の普通の人の風景に泣けてくるんですよ。冬に車を運転していたら、おじさんが、寒くて強風の中、背中を丸めて書類かばんを抱えて歩いていて。色がまた、えんじ色の昔のかばんで。なんか、こみあげてきちゃって。あと、夜11時くらいに女の人がスーツケース引いて坂道のぼっていて、その後ろを7、8歳くらいの女の子がついていって。なんでこんな時間に親子で歩いているのかなって、なんか泣けてきて。

 -原作ものより、基本的にオリジナルでお書きになるのも分かる気がします。

 古沢 何か作るのが好きなんですよね。子供時代はベビーブームだったので、近所に子供がいっぱいいたんですけど、1年から6年まで年が離れていたりすると、ひとつの遊びができない。だからルールを変えたり、新しい遊びを考え出したり、ボードゲームみたいなのを自分で作ってみんなで遊んだり。そういうのが好きで得意だったんです。今もドラマでそれをやっているような気がします。集まってくれたみんなが楽しんでくれたらいいなと。


 ◆古沢良太(こさわ・りょうた)02年、「アシ」でテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞し脚本家デビュー。同局「相棒」シリーズや、NHK「外事警察」、フジ「リーガル・ハイ」シリーズなどヒット作多数。05年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞。

 ◆ドラマ「コンフィデンスマンJP」 天才肌だが無軌道なダー子(長沢まさみ)、お人よしのボクちゃん(東出昌大)、百戦錬磨のリチャード(小日向文世)の信用詐欺師3人組が、欲望にまみれた人間たちから大金をだましとる、痛快エンターテインメントコメディー。9日スタート、月曜午後9時。1話の悪役ゲストは江口洋介。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)