幕末のハイライトのひとつである薩長同盟が「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ)のみやぞんのゴールと重なってしまったNHK大河ドラマ「西郷どん」32話の視聴率が、番組ワースト2位の10・4%となった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。裏がみやぞんで「やばいな」と語っていた主演鈴木亮平の予感が当たってしまったが、チャレンジ回であっただけに、惜しい結果ではある。

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薩長同盟の見せ場はみやぞんのゴールと完全に重なってしまった。

いよいよ西郷吉之助(鈴木)と桂小五郎(玉山鉄二)の会談が始まった8時半ごろに、24時間テレビのみやぞんが「白い雲のように」のBGMでラストスパートへ。西郷が桂に土下座をしたクライマックスの8時37分ごろ、みやぞんは残り600メートルのウイニングロードに入り、「負けないで」の曲で激走した。坂本龍馬(小栗旬)の仲介で西郷と桂が固く“シェイクハンド”を交わし、番組が終了する8時45分のタイミングでみやぞんがゴール。この瞬間に最高視聴率34・7%を記録した。

結局、薩長同盟の視聴率は8月12日の10・3%に次ぐワースト2位の10・4%となった。「歴史に残る薩長同盟と自負している」(桜井賢チーフ・プロデューサー)という力作だっただけに、ほろ苦い結果だ。

「西郷どん」に限らず、裏が24時間テレビと重なる週の大河ドラマは、この10年を見ても平均視聴率を下回っている。前の週と比べても、15年の「花燃ゆ」は3%マイナス、16年の「真田丸」は4・8%マイナス、17年の「おんな城主 直虎」は1・2%マイナスだ。今回の「西郷どん」は0・6%のマイナスだから、健闘した方かもしれない。

録画、BS、再放送などさまざまな視聴手段がある大河ドラマが視聴率を気にするのはナンセンスという意見もあるが、テレビドラマに携わる人にとっての主戦場はやはり本放送のリアルタイム視聴率である。情熱を傾けて作った作品ならば、本放送で見てもらいたい、裏に負けたくないと思うのは当然のことだ。特に薩長同盟は物語上の重要回。マスコミ向け試写会を開いて宣伝に努めたNHKも、裏がみやぞんと知って「どうしても見てほしい」と闘志をあらわにした鈴木と玉山も、送り手として極めて健康的だと思う。

ちなみに、「裏がみやぞん」を切り出したのは玉山。「放送はちょうどみやぞんさんがゴールするあたりだと思う」とし「彼は24時間走ってゴールを目指す感じだと思うが、亮平くんはもう1年近く走り続けています。ある種、重みが違う」と主演を盛り上げた。収録が押し、遅れて登壇した鈴木は、着席してから裏番組事情を知った。「やばいな~」とフリーズした様子に主演俳優の責任感がにじんでいて、あれこれ猛アピールを始めた姿に好感が持てた。

「歴史に残る薩長同盟が描けた」と胸を張るだけあって、中身はいろいろ斬新だった。英国に渡った薩摩と長州の留学生たちの、藩の垣根を超えた1枚の写真が流れを変えるというドラマチックな展開。「この若者たちはとっくに助け合っているのに自分たちは」と感極まった西郷が迷わず先に土下座する演出に、ネット上もどよめき。薩摩藩士の土下座の輪が桂を取り囲むという、自由な発想の激アツ名場面だった。坂本龍馬に教えってもらった西洋文化のシェイクハンドが、ここで効いてくるのもいい結びだった。

結果的に、みやぞんのゴールも、薩長同盟も激アツだった。24時間テレビに重要回を当てた大河の謎采配はさておき、次回は坂本龍馬が寺田屋で襲われ、療養のため鹿児島を訪れます。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)