1月期の冬ドラマ。日本テレビ、TBS、フジテレビで弁護士ものがかぶった一方で、不動産業、後妻業、新人ポリス、ハケン占い師など、ヒロインのお仕事はさまざまだ。「勝手にドラマ評」37弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「トレース~科捜研の男~」
フジテレビ月9ドラマ「トレース~科捜研の男~」

◆「トレース~科捜研の男~」(フジテレビ、月曜9時)錦戸亮/新木優子/船越英一郎

★★★☆☆

原作はダークな事件性を節度ある登場人物たちがまっすぐに受け止める快作。錦戸亮の代表作になると期待したが、船越英一郎が“刑事の勘”で1時間怒鳴り散らし、科学もヘチマもない。錦戸亮が気の毒すぎる。助演がモンスター化して悪目立ちするパターンが最近多すぎるし、中高年層へ向けた昭和演出のつもりならありがた迷惑。ドラマ作りはまず主人公の魅力作りに集中してほしい。原作は、口数少なめの優秀男子と、感性で何かを学んでいく新人女子の必勝フォーマット。「フラジャイル」や「アンナチュラル」寄りで勝負できたのに、カジュアル路線の「科捜研の女」をギャグった副題も残念だった。

テレビ東京ドラマBiz「よつば銀行~原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」
テレビ東京ドラマBiz「よつば銀行~原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」

◆「よつば銀行~原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」(テレビ東京、月曜10時)真木よう子

★★☆☆☆

経済と働く人に特化し、快作を連発するドラマBiz枠第4弾。初の女性主人公で何が描かれるか楽しみにしていたが、男社会の性差別と戦う女性管理職ものという、手あかのついた題材で腰が抜けた。20年以上も前の原作をベースに、「空気が読めないトラブルメーカーキャラを武器に」という相変わらずの女性像をやっていて悲しくなった。「美人だから昇進」のやっかみ、男性陣が結託して協力拒否、「お手並み拝見」の薄笑い。そこからですかの洗礼がしつこく、女性主人公だとまだ純粋なビジネスドラマ作ってもらえない2019年の現実だけはよく分かった。

フジテレビ系連続ドラマ「後妻業」
フジテレビ系連続ドラマ「後妻業」

◆「後妻業」(フジテレビ、火曜9時)木村佳乃/高橋克典/木村多江

★★☆☆☆

資産家老人をたぶらかして後妻に入り、バレないように殺して遺産をゲットする後妻業の女(木村佳乃)と、たくらみに気付いた娘(木村多江)の仁義なきバトル。殺す気満々のブラックコメディーと思ったら、片山さつきみたいなカツラで「けったくそわる~!」と関西弁張り上げてドタバタするコントな味わい。行儀悪さやヘンな関西弁でインチキ臭さに取り組んでいるが、後妻業を演じるには木村佳乃は美人すぎ。リアリティー不足でグロテスク感が漂わないのが残念。映画版、大竹しのぶの偉大さを思い知る。コントではなく、真っ当な怪演が見たかった。ハマる人には中毒性あり。

TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」
TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」

◆「初めて恋をした日に読む話」(TBS、火曜10時)深田恭子/永山絢斗/横浜流星/中村倫也

★★★★★

受験も就職も婚活も失敗したアラサー塾講師が、不良の東大受験に巻き込まれて人生激変のラブコメディー。聡明そうな不良・横浜流星、幼なじみのエリート商社マン永山絢斗、クールな元同級生中村倫也。この3人に同時に好かれるって、前世でどれだけ徳を積めばそんなことに。それぞれの魅力と人間性を3俳優が丁寧に演じ、学生時代のようにはいかない男たちの片思いの形がどれも切なすぎる。バックナンバーのエンディングと1話の永山絢斗に丸1日泣けた。流星くんにも中村倫也にも、きっといいシーンが用意されているんだと思う。「しみったれた人生の先輩」だから言える深キョンのせりふの数々も独創的で、受験ドラマとしてもちゃんと面白い。

日本テレビ水曜ドラマ「家売るオンナの逆襲」
日本テレビ水曜ドラマ「家売るオンナの逆襲」

◆「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ、水曜10時)北川景子/松田翔太

★★★★☆

三軒家チーフのスパルタ営業再び。サンチーがほぼロボ化してきたが、社外にフリーランスのライバル(松田翔太)を登場させたのは当たり。もう1人の天才を相手に、ワンツーの組み立てやロープ際からの逆転など、戦い方に起伏が出て、サンチーのしぶとさがさらに光る。孤独死をめぐる泉ピン子とサンチーの2話は、主義主張の力作。「家族に見守られようと死ぬ時は1人!」。サンチーのとどめをさらにひっくり返したピン子の“吹きだまり論”と、それも読んでいたサンチーのウルトラCがハッピーな後味だった。熟年離婚、ネット炎上、少子高齢化など、なんだかんだ社会派。優雅なイケメンを演じたら松田翔太は無敵。千葉雄大との急なBL展開で、おっさんずラブ要素をぶち込んできたのもさえている。

テレビ朝日木曜ドラマ「ハケン占い師アタル」
テレビ朝日木曜ドラマ「ハケン占い師アタル」

◆「ハケン占い師アタル」(テレビ朝日、木曜9時)杉咲花/小沢征悦/志田未来

★★★☆☆

人の原風景にシンクロできる主人公が、特殊能力で同僚を悩みから救う。占いというより、千里眼のお悩み相談。ロジカルな解決を、いかに占いが効いたように見せるかが絶妙だった「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」(13年、錦戸亮)のような理系アプローチを期待していたので、昔のホームビデオ見せて泣き落とすファンタジーは私の好みとは違った。職場の人たちは応援しがいがあるので、杉咲花がオカルト発動→一緒に過去を見て叱られる→キーアイテムを捨てて新しい自分に、という定型に乗っかればさくっと楽しい。コネ入社で孤立している青年(間宮祥太朗)の2話は、悩みも過去も独創的で泣けた。こちらを1話で見たかった。

フジテレビ木曜劇場「スキャンダル専門弁護士QUEEN」
フジテレビ木曜劇場「スキャンダル専門弁護士QUEEN」

◆「スキャンダル専門弁護士QUEEN」(フジテレビ、木曜10時)竹内結子/水川あさみ/斉藤由貴

★★★☆☆

映像クリエーター関和亮氏演出、キャラクター監修バカリズム。よく分からない感じが画面にも。世論を操作し、依頼人をスキャンダルから救う「スピンドクター」の活躍。フレッシュな題材が「弁護士」というタイトルに負けてしまい、法廷外の弁護士ものという分かりにくさだけがある。スピンドクターを主語にして、ボスと女3人のチャーリーズ・エンジェルをぐいぐい動かしてほしかった。1話のアイドル事件はタイムリー。芸能界のウラ事情と、アイドルたちの強い結末に救われた。スキャンダル題材は攻めているだけに、仕事内容にリズムがなくてテンポが悪いのがもったいない。竹内結子のミス・シャーロックな鼻っ柱はけっこう好き。

TBS金曜ドラマ「メゾン・ド・ポリス」
TBS金曜ドラマ「メゾン・ド・ポリス」

◆「メゾン・ド・ポリス」(TBS、金曜10時)高畑充希/西島秀俊

★★★★★

退職刑事のシェア・ハウスの住人と、新人女性刑事の異色捜査。老眼、腰痛のおっさんずが経験豊富で頼もしく、ひたむきなヒロインを中心にした異色のゴレンジャー編成にわくわく感がある。メゾンのエース西島秀俊が、元副総監近藤正臣、元鑑識野口五郎、たたき上げ角野卓造、事務小日向文世というメンツの中でパシリ扱いなのも新鮮。「密室殺人」「青猫事件」などの謎解きテイストと、ずしんとくる人間ドラマ。ひるんだり傷付きながらも何かをつかんで成長するヒロイン像は大好き。最近、奇人変人役ばかり回ってきた高畑充希が、普通の人という最も難しい役どころで女優力を開放していて、今まで見た彼女の中ではこれが一番好き。

◆「イノセンス 冤罪弁護士」(日本テレビ、土曜10時)坂口健太郎/川口春奈

★★☆☆☆

実証実験で冤罪を解き明かす若き弁護士の活躍。コメディー路線で当てた「99・9」のシリアスバージョンかと思ったら、そうでもなかった。優秀なマイペース男子と、その周りで教科書通りなことをわめく新人女子、という古いテンプレで騒々しく尺をとり、でんじろう先生みたいな実験で冤罪を晴らす。「司法の壁」を語るのは荷が重いように見える。「1度疑われた人間がずっとさらされる偏見」。無罪後も続く現実から目を背けない視点があるのに、玄関の前にゴミとか、ご近所さんがヒソヒソとか、結局テンプレに着地。平成も終わるのだから、古いテンプレはもう法律で禁じてほしい。

TBS日曜劇場「グッドワイフ」
TBS日曜劇場「グッドワイフ」

◆「グッド・ワイフ」(TBS、日曜9時)常盤貴子/小泉孝太郎/唐沢寿明

★★★★☆

原作はエミー賞受賞の米ドラマ。検事の夫が汚職容疑で逮捕され、子供を守るため16年ぶりに弁護士復帰した妻の奮闘を描く。19年ぶり日曜劇場主演の常盤貴子がこのヒロインに合っていて、ブランクの中でも適性を発揮していくタフな魅力がきちんとある。絶望した人に「まずカーテンを開けて掃除機をかけて…」のくだりはいいアレンジ。日常を大切に過ごせば、ラクにはならなくても強くなれるというこの人の哲学に共感できた。裏では夫への憎悪で震えていたり、軽やかな小泉孝太郎に油断ならない一面があったりと、A面だけではない人間の分厚さが隅々に。キャスト陣の迷いのない演技に演出の力を感じるとともに、まとまりすぎて物足りなさも感じる。

◆「3年A組 今から皆さんは、人質です」(日本テレビ、日曜10時半)菅田将暉/永野芽郁

★★☆☆☆

教師が生徒を人質にとり、ある生徒の死の真相を暴いていく10日間の過激授業。爆破で教室を孤立化→菅田将暉が戦闘力発揮→「1人殺す」宣言→小さなヒントを仕掛けて観察、あたりまではスピード感があってわくわくしたけれど、その先は、教師が泣きながら生徒に自己批判を迫る長い長い説教ワールドになってしまった。あちこち破綻している作品を身ひとつで支えている菅田将暉の離れ業。個人的には「ソロモンの偽証」と「告白」をもう1度見たい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)