テレビ東京新番組「シナぷしゅ」のキャラクター、ぷしゅぷしゅ
テレビ東京新番組「シナぷしゅ」のキャラクター、ぷしゅぷしゅ

テレビ東京が、4月改編で民放初の赤ちゃん向け番組「シナぷしゅ」(6日スタート、月~金曜午前7時35分、再放送午後5時半)を編成し、テレビ界の注目を集めている。視聴率にカウントされない0~2歳をターゲットにした試みだが、内容も採算も、勝算はあるという。産休明けの立場から「Eテレ以外の選択肢も必要」と語る飯田佳奈子プロデューサー(31)に話を聞いた。

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-赤ちゃん向け番組を企画した経緯は

飯田 一昨年に第1子を生んで実感したのは、子育てって前時代的だなあということ。先生がいない中、親という1世代前の伝承でやっていくしかないんですよ。相手が赤ちゃんなので安全策になりがちなんです。いまだに「テレビは発達に良くないから見せない方がいい」みたいな伝承も根強く、どうにかアップデートできないものかと。民放として、今の時代の良質なコンテンツを作りたいと思いました。

-ネット上に動画コンテンツがたくさんある時代ですが。

飯田 赤ちゃん向けのものって、シロウトさんがアンパンマンのぬいぐるみ持って「こんにちは。一緒に遊ぼう」みたいなレベルのものばかりなんですよ(苦笑い)。Eテレも民放の児童アニメもオフィシャル動画を出していないので、とっさの時にお母さんはこういう動画を見せるしかない。なので、「東京大学赤ちゃんラボ」の監修を受けたきちんとした番組を作り、いつでも動画で見られるようにしたんです。

-テレ東と東大の組み合わせも新鮮というか。

飯田 「スマホ育児」とか言われて、赤ちゃんに動画を見せることに罪悪感を感じているお母さんも、ちゃんとした機関の監修があれば肩の荷が下りると思ったんです。やはり「東大」は分かりやすいですしね(笑い)。ラボ発で大ヒットした絵本「もいもい」が面白くてお話を聞きに行ったら、頭の柔らかい先生方ばかりで、背中を押してくれました。

テレビ東京新番組「シナぷしゅ」について語る飯田佳奈子プロデューサー
テレビ東京新番組「シナぷしゅ」について語る飯田佳奈子プロデューサー

-Eテレのフィールドというイメージが強いですが、民放から挑戦したのはなぜですか。

飯田 Eテレさんには長い知見がありますが、いまだに黒電話がリリリン、ガチャ、みたいなアニメ表現があったりする。電話を知らない今の子どもには分からないですよ(笑い)。王道として変わらない安心感はEテレさんにしかないものですが、ウチは変わることを恐れずにアップデートしていきたい。どちらも大切で、選択肢がひとつではないことが重要だと思っています。

-確かに、昨年12月のテスト版では、アニメから「海外のあいさつの言葉」まで、Eテレとは違うテイストに驚きました。

飯田 外国語を出したのは、学ばせたいのではなく、音と耳の可動域を広げるという未知の刺激が目的です。こういうアイデアもラボのおかげです。「子どもに大ウケでした」とか「集中して見てくれて家事がはかどりました」とか、大きな反響がレギュラー化への後押しとなりました。4月からは、数のカウントを赤ちゃんがどう習得するのかや、オリジナルの「あいうえおの歌」など、いろいろ挑戦していきます。

テレビ東京「シナぷしゅ」
テレビ東京「シナぷしゅ」
テレビ東京「シナぷしゅ」
テレビ東京「シナぷしゅ」

-視聴率の対象は4歳以上。0~2歳という圏外をターゲットにした番組の編成は大胆です。視聴率バトルでは不利に見えますが、この番組企画には社長賞も出たんですよね。

飯田 「テレビの新しいあり方を考える」という、ウチの会社を見直しました(笑い)。各部署から人材が参加して、総力戦の布陣で挑んでいます。確かに視聴率は取りにくいですが、ターゲットが明確なせいか、スポンサー枠がすぐ埋まったのはうれしい驚きでした。配信やイベント、グッズなどの放送外収入でビジネスになれば、番組は続けていけることを示したい。海外展開もするので、いつか「KUMON式」みたいに、「シナぷしゅ」が世界共通のワードになるのが夢です。

-タイトルの「シナぷしゅ」とは。

飯田 神経細胞のシナプスに、「世界を広げたい」という意味を込めました。「ぷしゅ」は、赤ちゃんの刺激が湧き出るイメージと、お父さんお母さんの肩の力が「ぷしゅ」と抜けるイメージ。子育てについてネットで調べると、必ず両極の意見があるんですよね。情報量が多すぎて、振り回されてみんな疲れている。赤ちゃんにも、お父さんお母さんにも、「ぷしゅ」っと楽しんでもらえる番組を届けたいです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)