10月スタートの秋ドラマが出そろった。「半沢直樹」の祭りの後という感じで、見応えも視聴率も心細い秋。久しぶりに満点なしとなった。「勝手にドラマ評」44弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(深夜枠、シリーズものは除く)。

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「共演NG」(C)テレビ東京
「共演NG」(C)テレビ東京

◆「共演NG」(テレビ東京、月曜10時)中井貴一/鈴木京香

★★★☆☆

25年前の破局以来、共演NGだった2人が、大型連続ドラマのW主演として再会。企画・原作秋元康。描ける範囲内でタブーに踏み込み、コメディーの神みたいな中井貴一と鈴木京香が盛大にののしり合いをやっているだけで笑える。体温チェックで32度と出た中井の顔と、「死んでるんじゃなーい?」のやりとりに噴いた。現場は大御所俳優VSかつての弟子、2・5次元俳優VS戦隊俳優など共演NGだらけ。W主演として現場をまとめる試練の先に、どんなラブコメが展開するか期待。できれば本物の共演NGもキャスティングしてほしかった。キリンとサントリーが共演OKで番組提供しているミラクルがいちばんすごい。

「姉ちゃんの恋人」(C)フジテレビ
「姉ちゃんの恋人」(C)フジテレビ

◆「姉ちゃんの恋人」(フジテレビ、火曜9時)有村架純/林遣都

★★★★☆

ホームセンターで働きながら3人の弟を養う肝っ玉姉ちゃんと、職場のワケあり男子の恋。両親を奪った10年前の事故がカギになると思うが、今も何でもないようにしか話せない桃子の傷の落としどころと、心に重い十字架を抱えた真人の再生がどう交錯するのか、見どころが明確。「ひよっこ」組ばかりの身内感、登場人物の仲良し描写など、場違いな客としては輪に入りづらい岡田恵和ワールドだが、普通の人の輝きを端正に立ち上げる林遣都が、ファンタジーの中のリアリティーにしっかり引っ張ってくれる。有村架純の「地球、復活しました!」がコロナ疲れに効いた。クリスマスのラストに、この2人にどんな魔法がかかるのか期待。

「この恋あたためますか」(C)TBS
「この恋あたためますか」(C)TBS

◆「この恋あたためますか」(TBS、火曜10時)森七菜/中村倫也

★★☆☆☆

コンビニの社長とアルバイトの恋。身分違いの恋をベースに、SNSから道が開ける今ドキ感、権力者の特別待遇で大抜てきされるシンデレラ感など、夢みたいなことがかなう少女マンガ設計。「バカなのか?」「ゴミだな」。イケメンキャラのいつものオレ様設定はさておき、バイトテロ級に行儀が悪い不機嫌ヒロインというのは個人的に苦手だった。仲野太賀や市川実日子があんなに自然に輝く中、主演女優だけがデコラティブなキャラで悪目立ちさせられている感。「評価を受けるまでが仕事」「代わりなんていくらでもいる」。社長のセリフに力があるだけに、若き新参者が堂々とコンビニスイーツ界に風穴をあける直球ドラマで見たかった。

「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(C)NTV
「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(C)NTV

◆「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(日本テレビ、水曜10時)波瑠/松下洸平/間宮祥太朗

★★★☆☆

主要枠で初めて、マスクの日常でラブコメに挑戦した意欲作。社員の健康を守る産業医、おうち時間のSNSで始まる恋というのもタイムリー。謎の「檸檬さん」に振り回されるミミ先生(波瑠)の奇人っぷりがだんだん面白い。受け手には2話のラストで松下洸平と判明。恋敵の川栄李奈発動でラブコメ相関図が動きだし、3話は松下&川栄のアホな会話に爆笑した。マスクによる目だけの演技は俳優にとっても挑戦で、お茶を飲むシーンや自宅シーンなど、顔出し場面を増やす工夫が涙ぐましい。あごマスク多めで気になるが、2020年の人恋しさに挑戦し、“マスク越しのキス”の破壊力がすごい。

「七人の秘書」(C)テレビ朝日
「七人の秘書」(C)テレビ朝日

◆「七人の秘書」(テレビ朝日、木曜9時)木村文乃/広瀬アリス

★★☆☆☆

「名乗るほどの者ではございません」。影の存在である7人の秘書軍団が、はびこる“上級市民”を秘密裏に成敗。遺体の撤収と部屋の復元という序盤のスピーディーな隠密行動に期待が高まったが、コロナ禍のせいか行動範囲が秘書室とラーメン店ばかりでスケール小さめ。上級市民といっても、敵が銀行の室長レベル。離婚させたり、つるし上げを生中継したりと、小物相手に7人総出でいじめているみたいでスカッとしない。せっかく銀行、警察、病院、行政の秘書を集めているのだから、各ジャンルのスキルを結集してそこそこの巨悪を引きずり下ろしてほしい。隅々にテレ朝の「ザ・ハングマン」のDNAがあってなごむ。

◆「恋する母たち」(TBS、金曜10時)木村佳乃/吉田羊/仲里依紗

★★★★☆

息子を名門中学に通わせる3人の母親。額縁は「不倫ドラマ」だが、女性の生き方に3方向からアプローチし、苦手感が飛んだ。夫が失踪したシングルマザー、隙がないように見える女性管理職、夫の不倫を知ったセレブ妻。それぞれの場所での頑張りと生きづらさが丁寧に描かれ、原作柴門ふみ×脚本大石静が三者三様を魅力的に描く。木村佳乃×小泉孝太郎、吉田羊×磯村勇斗、仲里依紗×阿部サダヲの3つの物語の出し入れがうまく、ちょっと笑えてテンポがいい。ここぞという時にこそ軽い阿部サダヲと、女上司に恋する磯村勇斗の挑戦的な「壁どーん」がすごい仕上がり。うまい人ばかりで安心して見られる。

◆「24 JAPAN」(テレビ朝日、金曜11時15分)唐沢寿明/仲間由紀恵

★★☆☆☆

日本でも大ヒットした米ドラマ「24」(01年)をリメーク。総理候補暗殺計画をめぐるストーリー展開は本家とほぼ同じだが、テロや銃が身近にない日本だとサマになりにくく、あのスピード感と臨場感がいまひとつ。当時30代だったジャック・バウアーを57歳唐沢寿明。ある意味どんな犯人よりやばい男であるジャックの非情さとは、年齢的にも芸風的にも方向性が違うと思うので、唐沢流にハートフルに動かす方向でも見てみたかった。CTU(テロ対策ユニット)の懐かしいセットや同時多発のスプリット画面に心躍りながらも、まだ日本版の見方のコツがつかめず、本当にすまないと思っている。

「35歳の少女」(C)NTV
「35歳の少女」(C)NTV

◆「35歳の少女」(日本テレビ、土曜10時)柴咲コウ/坂口健太郎

★★★☆☆

心は10歳、体は35歳。交通事故で25年ぶりに目覚めた少女とその家族の再生。浦島モノの家族設定がフジでやっていた「サーティーン」と酷似であせったが、2話から10歳ならではの対人アプローチが動きだし、面白くなった。描いているのは、この子を通した周囲の再生。それぞれの後悔があり、どこかでゆがんだ人生が10歳の価値観でこじ開けられていく。柴咲コウの振る舞いや話し方がきちんと子役とシンクロし、「じぶんだけふこうへいだとおもってごめんなさい」の大号泣がかわいかった。人生を投げた幼なじみ男子(坂口健太郎)が、元教師の本能で良き理解者となっていく流れもいい。酔った橋本愛の電柱激突シーンが神だった。

「危険なビーナス」(C)TBS
「危険なビーナス」(C)TBS

◆「危険なビーナス」(TBS、日曜9時)妻夫木聡/吉高由里子

★★★☆☆

「はじめまして、お義兄さま」。“弟の妻”の訪問を受けた独身獣医師が、弟の失踪と血族の謎に巻き込まれていく。2時間サスペンスにぴったりな原作を連ドラにしたせいか、多すぎる人物群と細かいバトルの山で全体像をたびたび見失う。一族で浮いているお人よし主人公を妻夫木聡が魅力的に演じているだけに、「弟の失踪」「未解決の数学」「30億の遺産より価値のあるお宝」に隠された理系テーマの人間ドラマを集中して見たかった。吉高由里子のしゃべり方が「謎の女に見えない」という声もあるが、この人が動かないと主人公が動かないので、話の進み具合で良きチューニングを。

「極主夫道」(C)NTV
「極主夫道」(C)NTV

◆「極主夫道」(日本テレビ、日曜10時半)玉木宏/川口春奈/志尊淳

★★☆☆☆

専業主夫になった伝説のヤクザが、独自の流儀で家庭と町の平和を守る。原作はバッキバキな顔面でほっこりした結果を出す極道ショートコントみたいで楽しめるのだが、60分のドラマで小ネタばかり続くのはちょっとしんどい。クマさんエプロンの玉木宏、エアロビする玉木宏、フラフープで腰を振る玉木宏。それもいいけれど、「主婦の抗争にカチコミ」「PTAにカチコミ」など各話のストーリーへの展開が遅いと感じる。志尊淳の小気味良い舎弟ぶり、稲森いずみのぶっ飛んだ姐さんぶりなど、うまいキャストを配置した「天雀会」サイドが魅力的なので、いい流れを希望。2話は、物を大事にするために勝ちを譲った主夫のプライドがかっこよかった。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)