鹿が稲などを食い荒らす「鹿害(ろくがい)」に悩む滋賀県で、捕獲後の有効利用のためカレーチェーン店「カレーハウスCoCo壱番屋」が2010年に提供を始めた「鹿カレー」が人気を呼び、定番商品に成長した。農作物の被害を減らし、野生鳥獣肉(ジビエ)料理にも活用できる一石二鳥の試みとして注目されている。

 県内のフランチャイズ12店舗を経営する「アドバンス」(長浜市)が地元の猟友会と協力し、滋賀県限定の独自メニューとして全店舗で提供を開始。ルーが絡んだ鹿のもも肉は、鶏肉のような味と歯ごたえだ。値段は、ほとんどの店で税別で1皿800円程度。

 その後、長野県内のフランチャイズ2店舗でも提供が始まったほか、北海道や三重、和歌山、熊本の各県の直営店やフランチャイズ店などで期間限定販売され好評だったという。

 滋賀県ではイノシシに次いで鹿による農作物被害が多く、ピークの10年度には被害額が約1億7000万円に上った。県によると、同年度の推定生息数は山間部を中心に最大6万7000頭と、生態系維持に必要な8000頭の約8倍だ。県は猟友会などと対策を進め、捕獲数を増やした。

 捕獲した鹿は殺処分し、山中に埋める。だが、同県日野町猟友会の吉沢郁一会長は「命の無駄遣いになる」と、09年に獣肉解体処理施設「獣美恵堂(じびえどう)」を開設し、レストランなどに鹿肉の販売を始めた。

 そこに目を付けたのがアドバンスだった。岡島洋介社長は「鹿害で苦しむ農家の役に立てればと、獣美恵堂に声を掛けた。安全面や調理法に不安はあったが、試行錯誤して商品化にこぎ着けた」と説明する。

 欧州では高級食材として喜ばれる一方、日本では「臭い、硬い」というイメージが根強いが、吉沢さんは「鹿肉は低カロリーで鉄分豊富な健康食。一般の食卓に並ぶ日が来てほしい」と話した。