司会者、俳優として活躍した俳優の愛川欽也(あいかわ・きんや)さん(本名・井川敏明)が15日に死去していたことが16日、分かった。80歳だった。肺がんと闘いながらも、最近まで仕事を続けた。映画「トラック野郎」やドラマ「西村京太郎トラベルミステリー」などの人気シリーズで、個性的な魅力を発揮。「なるほど!ザ・ワールド」「出没!アド街ック天国」などの長寿番組の名司会者としても親しまれた。

 愛川さんの訃報はこの日、親しい関係者に伝えられていた。「昨日(15日)、肺がんで亡くなりました」。一方で、所属事務所関係者は午後7時35分、都内の自宅前に集まる取材陣に「明日の朝10時に(報道各社に)ファクスをお送りいたします。ご家族の意向で今、話せることは、それ以上ありません」と説明した。

 愛川さんは病名を公表せず、仕事を続けてきたが、がんは脊髄にも転移していた。3月末までは日常生活に支障もなく、元気な様子だったが、今月に入り容体が急激に悪化。歩くことも難しくなり、自宅で寝たままの生活を送っていた。寂しがり屋の愛川さんは入院を嫌がり、在宅で医療措置を受けることを選択。上旬には自宅に介護ベッドや点滴器具が運び込まれた。妻のうつみ宮土理(71)の懸命の看護に支えられ、亡くなる直前まで自宅で静かに時を過ごした。一方で仕事への意欲は衰えず、病床でも監督する新作映画の構想を練っていた。明日18日から経営する東京・中目黒の劇場「キンケロ・シアター」で、第8作監督作品を上映。18日の初日舞台あいさつも希望していた。

 テレビ東京系「出没!アド街ック天国」は、3月7日に迎えた放送1000回で降板。うつみは愛川の健康不安を否定したが、愛川さんが運営したネットテレビ局「kinkin.tv」は、今月6日に突然閉鎖。翌7日に重病説が報じられると、周囲への影響を考えたのか、うつみは「風邪をひいて自宅で休んでいます。『早く、ロケに行こう』とそればかり言っています」とコメントした。

 愛川さんは東京生まれ。埼玉の進学校、県立浦和高を経て、俳優座養成所に入った。舞台出演を重ねながら名優ジャック・レモンらの吹き替えで活躍。70年、フジテレビ系アニメ「いなかっぺ大将」のニャンコ先生の声も演じた。TBSラジオの深夜番組「パックインミュージック」のパーソナリティーとして若者の支持を得て「キンキン」の愛称が定着した。

 個性派俳優としても活躍した。菅原文太さん主演の大ヒットシリーズ映画「トラック野郎」で主人公の相棒やもめのジョナサン役を好演。ドラマではテレビ朝日系土曜ワイド劇場「西村京太郎トラベルミステリー」シリーズの亀井刑事役でお茶の間に親しまれた。

 名司会者でもあった。日本テレビ系「11PM」で11年間手腕を発揮。楠田枝里子とコンビで81年スタートのフジテレビ系「なるほど!ザ・ワールド」は15年間続いた。「はい、消えた!」と解答席をたたく決めゼリフも人気を呼んだ。20年間司会を務めたテレビ東京系「出没!アド街ック天国」では、「世界最高齢の情報番組司会者」としてギネス世界記録に認定。「おまっとさんでした」のあいさつも広く知られた。

 00年に「劇団キンキン塾」を結成。活動拠点となる劇場を09年にオープン。自分の夢を実現させる活動も行っていた。うつみとは、前妻と離婚後の78年に結婚。芸能界きってのおしどり夫婦として知られた。

 ◆愛川欽也(あいかわ・きんや)1934年(昭9)6月25日、東京都生まれ。54年に俳優座養成所に入所。劇団三期会を経てフリーに。58年TBS系「おかあさん」でドラマデビュー。78年テレビ朝日系「東京メグレ警視シリーズ」に主演。その後、テレビ朝日系「西村京太郎トラベルミステリー」シリーズなどに出演。司会者に加え声優やラジオパーソナリティー、エッセイストとしても活動した。78年にうつみ宮土理と結婚。最初の結婚で、58年に長男(俳優井川晃一)、60年に長女(女優佳村萌)が誕生。167センチ。血液型A。