1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の当時14歳だった加害者男性(32)が「元少年A」の名義で書いた手記「絶歌」が11日に出版され、物議をかもしている。

 被害者となった小学6年生の土師淳くん(当時11歳)の父・守さんが「なぜこのようにさらに私たちを苦しめることをしようとするのか全く理解できません」「今すぐに出版を中止し本を回収してほしい」と訴え、批判が集中している同書。テレビ番組やネット上でも議論されており、やはり否定的な意見が多い。

 尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏(68)は11日に更新したブログで、「サカキバラの残忍な殺人行為を認めてしまうことにつながる怖さ感じる」との思いから同書を「読みたくないです」とし、遺族への思いを尊重して出版を中止するべきだと主張した。

 14日放送のTBS系「サンデー・ジャポン」で、テリー伊藤(65)は「言い訳がましい本。読み終わった後に不愉快な気分になった」と感想を述べ、西川史子(44)も「身勝手な本だなって思いました」と同意。また、デーブ・スペクターは加害者男性が自身の名前を明かしておらず、また実刑を受けていない点などを指摘した上で、同書について「啓発的な内容はないんですよ。建設的な内容であれば、専門家の文章があったり(するが)、それも全くない」とコメント。アメリカでは犯罪者に自身の犯した犯罪によって金もうけをさせてはならないとの考えから、こうした本が出版されても印税を渡さないようにしていることを前置きした上で、「言論の自由があるから、日本でも憲法上、本を差し止めることはできないが、せめてその収益、映画化の権利だとか、そういったものを渡さないようにするべき」と熱弁した。

 また同日に放送されたフジテレビ系「ワイドナショー」では、坂上忍(48)が「この手記の原作者は少年Aなんでしょうが、亡くなられたお子さんも遺族の方も、もう一方での原作者だと思う。なぜその人たちの了解を得ずに初版で10万部刷るのか。さっぱり分からない」と、同書が出版されたことに首を傾げた。また加害者男性に対しても、「やっぱり感情論としては全く納得ができない」とした。

 一方、武田鉄矢(66)は「少年たちが犯す犯罪をひもとく上では貴重な例となるのでは」との意見を示したが、これに対して坂上は「下手すると若い子たちが読んだら(犯罪の)助長になりかねないんじゃないか」と少年たちへの悪影響を危惧した。

 この放送を受け、タレントのフィフィ(39)はツイッターで「少年Aの手記出版を貴重な資料として賛成する意見もあるけど、資料と言うなら手記として加害者が出すのでなく、専門家を通して被害者の承諾を得た上で出版したらいい。そうしてこそ犯罪者心理を研究する資料として成立するのでは?」と疑問を呈し、「少なくとも被害者の承諾も得ず出版され、遺族の気持ちまで踏みにじったこんな本に自分は金を落とす気にはなれない」とコメントした。

 批判意見が多い中、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏(39)は「元少年Aの手記を、私は評価したい」とのタイトルでブログを更新。同書を読了し、「犯した過ちから背を向け逃げているわけではなく、ちゃんと向かい合っている、と私は判断した。そうなると、彼の『体験』は極めて特異なものであり、そこから紡ぎだされる心情や考え方は『貴重なサンプル』ともいうことは出来る」と、“資料”としての側面を評価。「もちろん元少年A、ならびに出版元である太田出版は、せめて被害者家族である両ご家族に仁義を通すべきだったとは私でも思う」とした上で、同書には加害者男性の反省や感謝がしっかりとつづられているとし、「私は、この本は世に出して良かったと思える内容になっている、と感じた。被害者ご家族も、どうかいつの日かで構わないので、お読みいただきたいと思う。この本を読むことによって、むしろ救われる何かがあるような気がする。それだけの内容になっている」とした。