女優の若尾文子(81)が半世紀ぶりに映画館の舞台あいさつに立った。

 「若尾文子映画祭」の開幕に合わせ、27日、都内の劇場に登場した。

 あでやかな着物姿に立ち見も出た館内からは大きな拍手が起こったが、若尾の右手にはつえが。スタッフの手を借りながら階段を1歩1歩踏みしめるように上った。

 「明け方まで仕事をしてまして、ちょっとすべって転びましたの」と観客の心配に笑顔で応えた。

 数日前にひねった足を治して舞台に立つため、律義な若尾がトレーニングを繰り返してさらに悪化させてしまったというのが真相のようだ。

 映画祭では150本を超える出演作のうち、60本が上映される。61年の「妻は告白する」では増村保造監督の厳しさに「毎晩台本を抱いて寝ました」。60年の「からっ風野郎」では、共演した作家三島由紀夫さんも増村監督の厳しいしごきにさらされた。「もう、大作家が…。見てはいけないものでした。もう目をそらし続けました」と秘話を明かした。

 59年の「浮草」1作しか縁のなかった小津安二郎監督については「白い帽子に白いシャツ、朝からお酒をめしあがっているんですけど、それはすてきで…。こういう人のお嫁さんになりたいって真剣に思いましたね」と20代の恋心も明かした。