歌手沢田知可子のヒット曲「会いたい」の歌詞改変や題名変更をめぐり、作詞した沢ちひろさんが、発売元の「ヤマハミュージックアンドビジュアルズ(現ヤマハミュージックメディア)」などを相手に損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した裁判は、原告の沢さん側から訴状が取り下げられていたことが10日、分かった。

 当初はこの日、口頭弁論再開へ向けた弁論準備が予定されていたが、原告、被告双方の代理人弁護士は姿を見せず。同地裁によると、原告側から訴状が取り下げられ、前日9日付で受理したという。

 訴状によると、6月30日に原告側代理人から「都合により原告は訴状のすべてを取り下げます」と記載された取り下げ書が、同地裁の当該民事部に届けられ、7月2日に同民事部が受理。同8日に、被告側も同意の書面を提出し、9日付で地裁が訴状の取り下げを受け付けたという。

 理由について、同地裁は「訴状にある以上のことは申し上げられない」と話すにとどまった。

 裁判は、改変などで精神的苦痛を受けたとして、沢さんが、「ヤマハミュージックアンドビジュアルズ」と、沢田の夫で所属事務所代表を務める音楽プロデューサーに200万円の損害賠償を求めたもの。

 沢田知可子が昨年7月23日に発売したアルバムの中に、沢さん作詞で大ヒットした「会いたい」を、6人組男性ボーカルグループ「INSPi」とともに再歌唱して収録。その際にタイトルを「会いたい~with INSPi」とし、歌詞カードにはない冒頭部分で、沢田が「アイム・イン・ラブ・ウイズ・ユー」と聞き取れる言葉を発しており、沢さん側はこれが歌詞改変にあたるなどと主張していた。

 対して、ヤマハら被告側は、アルバ厶収録曲のタイトルは「一緒に歌っているグループ名を指すもの」とし、改題との概念はないとし、歌詞についても「歌詞カードにない部分は歌詞ではなく、ナレーションのようなものだ」と対抗した。

 ただし、ヤマハ側は、楽曲をめぐる周辺への配慮から、発売後の昨年7月31日に発売を中止し、後に、同楽曲以外を収録したアルバムを再販している。

 この流れから、今年1月20日に第1回口頭弁論が開かれたが、その後は弁論再開までに双方の証拠提出などの準備が必要となり、のべ3回、弁論準備で口頭弁論再開へ向けて準備書面を交換。著作権侵害の概念や、侵害のとらえ方など、双方が書面で主張を続けてきた。

 前回6月1日には、被告側代理人は「弁論再開へ向けて、近づいているとは言える」と話し、主張に自信を持つ様子を見せていた。