女優川栄は「おバカ」じゃない。元AKB48川栄李奈(20)が、初舞台にして主演を務める「AZUMI 幕末編」(9月11~24日、東京・新国立劇場中劇場)の稽古で奮闘している。アイドル時代は「おバカ」キャラで愛されたが、演出家の岡村俊一氏も驚いた記憶力で、女優人生のスタートダッシュを決める。このほど、日刊スポーツのインタビューに応じ、意気込みを語った。

 稽古に臨む表情は、真剣そのものだ。刀を持って、20以上ある殺陣のシーンに臨む。演じるのは、主役の美しい刺客、あずみ。表情ひとつ変えずに、敵を切っていく。次から次へとシーンが変わるが、動きによどみはない。

 「最初は毎日筋肉痛だったんですけど、もう慣れました。殺陣の動きはほとんど全部覚えました」

 今月4日にAKB48を卒業。「めちゃ×2イケてるッ!」の抜き打ちテスト企画でメンバー最下位になるなど、「おバカ」キャラで知られる。だが実は、類いまれな記憶力を持っている。番組の企画で、1時間で先輩メンバー全員の誕生日を覚えた。人や店の電話番号も、1度見れば記憶してしまうという。

 「蒲田行進曲」など数々の作品を手掛けてきた演出家の岡村氏も、「正直驚きました。通常ではあり得ないスピードで殺陣の動きを覚えている。過去に例のない圧倒的な記憶力です」と話す。

 目で見た画像や、光景で覚えるタイプのようだ。「相手の人が変わっちゃうと、ちょっとパニックになる。今はレッスン着ですけど、本番は衣装も髪形も変わるので、やばいかもしれませんよ」と苦笑いするものの、稽古開始から2週間で努力を積み重ね、役を自分のものにした。表情は充実感であふれている。

 「稽古して、帰って練習して、台本読んで、寝て、起きて、稽古来て。自分のやりたいことに打ち込めているのを実感しているし、毎日がすごく楽しいです」

 ただ、1つ不安な点もある。

 「練習中に『そこは時計回り!』って言われても、どっちか分からないんですよ。これまで全部右、左で覚えてきたので。いまだにアナログ時計の動きがよく分からないから…」

 やっぱり「おバカ」は健在? かもしれない。【横山慧】

 ◆川栄李奈(かわえい・りな)1995年(平7)2月12日、神奈川県生まれ。愛称「りっちゃん」。10年7月AKB48に11期生として加入。昨年5月、岩手の握手会で起きたメンバー襲撃事件で負傷。同7月薬膳コーディネーターの資格試験に合格。今月4日卒業。選抜総選挙は11年の第3回から参加し圏外→圏外→25位→16位→不出馬。フジテレビ系「バイキング」専属リポーター。血液型O。

 ◆「AZUMI 幕末編」 小山ゆう氏の漫画で、ビッグコミックスペリオールで09年から14年まで連載された「AZUMI」が原作。同誌で94年から08年まで連載され、03年に上戸彩主演で映画化、05年に黒木メイサ主演で舞台化もされた「あずみ」の続編にあたる。幕末を舞台に、主人公の刺客・あずみが大老井伊直弼を暗殺する桜田門外の変のシーンから物語が始まる。双子の兄駿介や、坂本龍馬、勝海舟ら幕末の志士らとともに、新たな歴史を築いていく様子を描く。