3月に死去した桂米朝さん(享年89)が存命なら90歳の誕生日を迎えていた6日、ゆかりの京都・南座で追善落語会が開かれた。

 思い出トークに歌手さだまさし(63)がゲスト出演。はなし家のお株を奪う“独演会”を展開した。

 落語家の全国ホールツアーを世に広めた米朝さんは、60年から南座で高座に上がった。一門による芝居も行うなど、ゆかりが深く、生誕90年を祝う南座での追善興行…のはずだった。

 この日は米朝さんの楽屋も用意され、中入り後の思い出トークには桂ざこば(68)桂米団治(56)桂南光(63)の一門に加え、米団治が小米朝時代から親交のあったさだも出演。「精霊流し」の出ばやしに乗って現れたさだは、約34分のトークコーナーの8割以上でしゃべり続けた。

 さだといえば、達者なトークを織り込んだコンサートが絶大な人気を誇り、繊細な歌とのギャップが魅力のアーティストでもある。

 「戦争を生き延びて運を使い果たした父は借金を作り、息子(さだ自身)が借金を返すためにコンサートを続けた」

 「借金28億円を返すのに30年かかった」

 「(フォークデュオ・グレープの)ボーカルはじゃんけんで決まった。歌が下手だから、歌いだすのが恥ずかしくてトークに力を入れるようになった」

 「(サービス精神の源は)やっぱり借金ですね。僕の歌は暗い歌が多いから、お客さんの眉間にしわが寄っている。しゃべって笑ってもらうと、ホッとする」

 米朝さんと同じ89歳で亡くなった実父と自身の半生をネタにしゃべる、しゃべる…。

 ざこば、米団治らはすっかり聞き役に回り、南光は「ちょっと、乗っ取られてるやん! (米朝事務所の)常務として言います。米朝事務所にきませんか?」と思わず勧誘した。

 これには、さだも苦笑し「しゃべるだけだと、苦しくなったら歌に逃げられませんから」。軽快な話術で落語ファンをわかせ、米朝さんには「にぎやか、騒がしいといった上方落語のイメージとは違い、品があった」と述懐。中学時代から江戸落語にはまったが米朝さんの生前の高座を見ることはなかったというが、音源では何度も聴いており「笑いを欲しがらない希有(けう)な落語家でした」としのんだ。

 さだは、小米朝時代から米団治と親交があり、飲み仲間でもあった。米団治は落語とオペラを融合させた公演を打つなどクラシックや音楽界にも造詣が深く、さだとは意気投合したようで、今回の出演に関しては「米朝が亡くなって、葬儀屋さんとか関係者以外で最初に電話をいただいたから」と説明していた。