第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。

 広瀬すず(17)が大きく飛躍した1年を新人賞で締めた。「海街diary」で、同じ名前のすずを演じた。原作漫画のすずを見て「見た目、名前、末っ子、スポーツ少女、髪形まで全て似ていた」と思ったという。台本を使わず、是枝監督から現場でせりふを伝えられて演じることを自ら選んだ。「リハーサルをしないと何の場面かも分からないけれど不安はなかった。気楽でした」。姉妹を演じる綾瀬、長沢、夏帆と撮影前に1日だけ、生活する機会を与えられた。撮影序盤、姉に「ありがとう」と言われる場面で「久々に温かい何かに触れた」と感じ、姉妹の感情が自然と出るようになったという。

 17歳ながら「負けず嫌いの完璧主義」と言い切るくらい演技にこだわる。劇中でサッカーのプレー場面を演じたが、競技経験はなかった。練習を積み、本番では是枝監督から「一番いい」とOKが出たが、演技に納得ができず、求められていた笑顔を出せなかった。「今でも納得していません」。

 作品はカンヌ映画祭に出品され、現地にも足を運んだ。「今でも1日1回は『海街』のことを考えます。賞は形として実感できる。いまだに変な感じはするけど、これからも頑張ろうと思えます」。【村上幸将】

 ◆広瀬(ひろせ)すず 1998年(平10)6月19日、静岡県生まれ。姉アリスの所属事務所にスカウトされ、12年にミスセブンティーンに。13年ドラマ「幽かな彼女」で女優デビュー。来年公開の「ちはやふる」で映画単独初主演。159センチ。血液型AB。

 ◆海街diary 鎌倉に住む香田幸(綾瀬はるか)佳乃(長沢まさみ)千佳(夏帆)3姉妹のもとに、15年前に家族を捨てた父の訃報が届く。葬儀が行われた山形で、幸は初対面した異母妹すず(広瀬すず)を引き取り、同居を始める。4人が穏やかに暮らす中、3姉妹の母(大竹しのぶ)が現れる。是枝裕和監督。

 ◆新人賞・選考経過 「ぶっとんでいるが、まっすぐな役を演じきった」(伊藤さとり氏)など有村架純を推す声も上がったが、1回目の投票で広瀬すずに決まった。「これから、どんな役もこなす形で伸びていくと思う」(福島瑞穂氏)など評価する意見があった。